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【書籍】反戦と非暴力——阿波根昌鴻の闘い

亀井淳著 高文研/1999年2月/1300円+税 

闘いの現場から生み出された「人間」の記録

 阿波根昌鴻という人は、不思議な人だ。私自身じかにお目にかかったことはないのだが、それでもトリコになっちゃった(死語だなぁ)一人である。96年の5・15、嘉手納での行動を終えた翌16日、まったく唐突に決めて伊江島へ出掛けたのだが、直前に読んだ『米軍と農民』の、あらゆる意味でスゴイ彼らの闘いと、阿波根のキャラクタ−にすっかり魅せられてしまったのである。

 阿波根には先行して3冊の著作(『人間の住んでいる島——沖縄・伊江島土地闘争の記録』1982年私家版、『米軍と農民——沖縄県伊江島』1973年岩波新書、『命こそ宝——沖縄反戦の心』1992年岩波新書)があるわけだが、「あとがき」で亀井自身が述べているように、この本はそれらの再編集でもあり、昨年末より上映されている映画「教えられなかった戦争・沖縄編——阿波根昌鴻・伊江島のたたかい」(不満はあるものの、阿波根の独特の口調や仕草に触れるためにも機会があったら観てほしい)の制作中の資料をもとに企画された。1903年生まれの阿波根の生い立ちから沖縄戦、戦後の伊江島での土地闘争を、阿波根の記録した写真を多用しながら追っている。

 彼らの闘いから学ぶことはいくらでもあるが、今映画をも通して再認識するのは、「闘いを記録する」という姿勢である。米軍上陸前からメモをとっていたという阿波根は徹底的に闘いを記録する。1953年9月、米軍が伊江島に「交渉」に来たばかりの頃からの克明な「メモ」と、1955年からは当時たいそう高価であったカメラとを使って。1959年、闘いの中心でもあった二人の青年が、不発弾をスクラップにして生活の費用とするための解体作業中に爆死する。その時も阿波根はカメラを持って現場に走り、彼らの最期を記録する。「見るも無残な姿でした。……わたしは、これでたたかいはおしまいになるのではないかとさえ思いました。……わたしは悲しみをこらえて、写真をとりました。アメリカは、証拠がないと納得しない」。記録は初めは米軍の「嘘」に対抗する手段であり、真実を訴えるための「証拠」であったろう。それはやがて沖縄本島へ、「本土」へと伊江島の実態を訴え、支援と連帯のを拡げるための「武器」ともなった。そして何十年かを経た今、阿波根がある時は悲しみを、ある時は怒りをこらえて残した記録は歴史となり、さらに現在への連続性をもって私たちの心をかきたてる。

 本書からは脱線するが、阿波根の記録癖(?)はそれに留まらず、「現物」をも収集し始める。それが彼の反戦平和資料館「ヌチドゥタカラの家」の展示品の数々だ。島の人たちが拾った米軍の物資(模擬ミサイルから衣類まで)、生活用品にプラカードなど、「集めるというのは、一つの楽しみでもありますよ」(『命こそ宝』)と阿波根自身も述べているが、ここまで徹底した時にもつ力というのは凄いものだ。

 「記録」への姿勢と同時に、この本の主題であった「非暴力」という思想そのものも、観念として先にあったのではなく、米軍の圧倒的な暴力と、抵抗を口実にした弾圧、「見る人も聞く人もいないとき、この離れ小島の伊江島で殺されたらおしまいだ」という、闘いの現場から必然的に生まれ、練りあげられたものだった。それゆえに持つ強さとしなやかさとを、もう一度かみしめてみたい。

 72年の「復帰」以降現在まで、またパラシュート訓練の受け入れにまでいきついた伊江村そのものと阿波根たちの関係についてはもっと触れられてよかっただろう。阿波鴻自身が高齢であって取材が不可能であるということを差し引いてもかなり残念な作りの本である。島の「外」の者である亀井が、1998年という今だからこそ迫れたものがそこにあったのではないか。『米軍と農民』と『人間の住んでいる島』が入手困難な今、本書の意味もあるとしても。

初出:「派兵チェック」80号(99.5)

【補】阿波根が自費出版した写真集には『人間の住んでいる島』というタイトルがついている。「人間とはどういうものか教えてやろう」(『米軍と農民』)という阿波根の、気骨がそこに現れている。「人間の住んでいる」という宣言は「軍用地を生産と生活の場に」という反戦地主たちの共通の想いでもある。で、この「手を耳より上に上げない」に象徴される「非暴力」の闘いが、辺野古で行なわれています。座り込みテントの中に、阿波根の遺影をかかげて。ついでに、この後、『人間の住んでいる島』とは別に、彼の写真集が出たと思う。

反戦と非暴力―阿波根昌鴻の闘いBook反戦と非暴力―阿波根昌鴻の闘い


著者:伊江島反戦平和資料館「ヌチドゥタカラの家」,亀井 淳

販売元:高文研
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