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【映画】花はどこへいった

花はどこへいった〜ベトナム戦争のことを知っていますか
坂田雅子監督/シグロ/2007年/71分/英題 Agent Orange--a personal requiem

 『タイム』誌を中心に活躍したフォトジャーナリスト、グレッグ・デイビス。2003年、彼は肝臓ガンで突然この世を去る。なぜ彼が死ななくてはならなかったのか、妻の坂田雅子は、彼の友人から、彼がベトナム戦争に従軍していた時に浴びた枯葉剤が原因ではないのかという示唆を受け、ベトナムへ向かう……。

 冒頭のバエズの歌う「雨を汚したのは誰?」とそこに流れる風景があまりにも美しいこのドキュメンタリー映画の軸はおおまかに三本。グレッグというフォトジャーナリストの人生。枯葉剤作戦と被害の現状。そして「障害者福祉」。

 まずもって驚かされるのは、少なくとも2000年までは枯葉剤による障害を持った子どもが産まれ続けていたという現実だ。個人の浴びたものだけではない。土壌と水の汚染が、今でもベトナム社会を脅かしている。ヒロシマやナガサキでそこまでの話は聞かない。チェルノブイリはどうか。セミパラチンスクは? 劣化ウラン弾の使われたイラクや旧ユーゴでは? 

 被害者に対する米国の態度は呆れるほど変わっちゃいない。ベトナムの被害者からの賠償請求に対し、米司法当局は「米国の兵士を守るために使われたのであり、そこに住む人々に害を加えることを目的としたものではないので、戦争犯罪ではない」との判決を出している。原爆だって「米国の兵士を守るため」だからなぁ。核実験、枯葉剤、そして劣化ウラン弾。米兵ですら自国のための実験材料であり、使い捨ての存在にすぎない。「軍隊は市民を守らない」というのはもはやありふれたキャッチコピーだが、軍隊は自国の兵士すら守らない。実に首尾一貫している。感心してる場合じゃないのだが。そしてまたしても「モンサント」である。ダイオキシンを含んだ枯葉剤「オレンジ・エージェント」の製造元のひとつだ。何度この名前を聞けば気が済むんだか。

 「兵士を殺さないことで障害者をたくさん作り、(福祉に予算を使わせることを含めて)敵国の国力を弱める」という「効果」を期待されている兵器は存在する。その発想自体がオソロシイが、枯葉剤の場合も結果的に同じ「効果」を生んでいる。ホーチミン市の大きな産婦人科病院の院長である女医は、(妊婦の)超音波検診による胎児の異常の早期発見を進めていると語る。もちろんそれは中絶のためだ。「戦争はまだまだ続いている。だから戦争はいけない」。従軍中に枯葉剤を浴びた元米兵が語る。そこへいたるまでの「犠牲」の大きさに、呆然と立ち尽くす。

 この映画は公開を前提にせずに作られたそうである。監督も映画を撮るのはまったく初めて。非常によく整理されてわかりやすい作りになっているし、監督の人々へのぬくもりのあるまなざしはよく伝わってくる。反面、監督のナレーションは早口すぎて煩わしい場面もあり、全体に語りすぎであるとの印象はぬぐえない。


初出『インパクション』164号 2008.7

公式サイト  関連日記 追記は「続きを読む」に

花はどこへいった 枯葉剤を浴びたグレッグの生と死Book花はどこへいった 枯葉剤を浴びたグレッグの生と死

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【補】書き切れなかった障害者福祉のことについて。この被害について、個人や地域で負い切るのはムチャです。またそうすべきでもない。そしてベトナムという国ですら、負い切れるものではないかもしれない。ベトナムが国として、アメリカにきちんと賠償させるべきだと、ぢぶんは思います。


 文中に書いたことをもう少し詳しく。
 地雷という武器のコンセプトのひとつは、「相手の兵士を殺すことなく戦闘能力をなくす」ということです。それは「兵士を殺してしまえばただそれだけだが、兵士が生きたままで脚を吹き飛ばされれば、その兵士を「回収」し、「後送」し、「治療」するだけの手間とコストを相手にかけさせることができるから。そして「障害者」となった兵士に対する福祉政策が必要となり、その分、戦費にかける予算をダウンさせることができる(しない国もあるけども)。さらには、非常にイヤな言い方ですが、「障害者」の割合が増えることによって、生産力を落とし、いわゆる「国力」を低下させるわけです。そのために、「死なないように、しかし大きなダメージを与える」技術力が駆使されている。元々は「敵の前進を阻む」目的で作られた地雷に、このようなおそらくは二次的な目的が付加され、それは成功している。同じような経過をたどったものにクラスター爆弾(集束爆弾)があります。

 この枯葉剤も、その目的はあくまで「密林の除去」でありながら、同じような「効果」を持った。しかもそのことを使用者(作戦指示者)は予測していたはず。それを目的としたわけではなく、「そういうことがあってもやむを得ない」という程度には。そして自国の兵士すら「やむを得ない」中に含まれている。そのことが非常にわかりやすく見えてくるかと思います。

 そしてさらに、「重い障害があるとわかっている子どもを産むかどうか」という問題が待っています。これ以上は負い切れないというベトナム社会を責める気持ちは持てません。本当にアップアップです。障害児の世話をする家族や本人たちの笑顔はもちろん本物で、「この子がいてよかった」と思う気持ちに偽りはないでしょうが、だからいいのだといって済ますわけにはいかない。「障害児だからといって中絶していいのか」と問われれば、命の重さに変わりはないのだという原則は揺るがすわけにいかない。正直、どうしていいのかさっぱりわかりません。そのわからなさを共有するしかないのだろうなぁ。

 で、忘れてはならないのは、日本はこのベトナム戦争における米軍の後方基地であり、米兵は日本から(も)出撃していき、ベトナムから休暇や退役で帰ってきては日本で疲れを癒し、ある者は再び出撃していった、ということです。そして日本の経済成長は、このベトナム戦争にも支えられたということ。だからこそ、ベトナム戦争は日本の反戦運動にとって大きな意味を持ったし、あれだけのうねりを持ちえたのだと、ぢぶんは思います。(2008.12)

 

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