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【映画】戦場のフォトグラファー

戦場のフォトグラファー ジェームズ・ナクトウェイの世界

クリスチャン・フレイ監督/カラー/2001年度作品/スイス映画/35mm/原題「Warphotographer」

 不勉強なもので、ジェームズ・ナクトウェイという写真家を知らなかった。というより、海外の報道写真家といえば、キャパくらいしか知らないのだが。で、チラシの宣伝文によれば、ナクトウェイは「キャパの魂を受け継ぐ」とされているのだが、印象は全然違う。よかれ悪しかれ自己演出に長け、「すかしたキザ野郎」なキャパと、ある意味対極にいる人物だ。

 ジェームズ・ナクトウェイ、一九四八年生まれ、戦場カメラマン。そのドキュメンタリーである。

 この映画のために、ナクトウェイのカメラには上下に小さなカメラが取り付けられている。下のカメラはナクトウェイのカメラ越しに斜め上・後方に向かって、ファインダーを覗く彼を捉える。上のカメラは前を向き、ナクトウェイがレンズ越しに見ている光景を(実際にはナクトウェイの目線よりちょっと上なのだが)、私たちに提供する。戦場で取材するナクトウェイを取材するのに、周囲のクルーを気遣わずに、そしてわずらわされずにすむように作られた小型カメラなのだが、おかげでこの映画の何分の一かは「ナクトウェイが自分で撮った」ものになった。写真家のドキュメンタリーとしては、この上なく豪華である。コソボで、パレスチナ(ラマラ)で、ジャカルタで、私たちは彼の目に限りなく近い光景を共有し、シャッターを押す指を感じることができるのだから。

 ナクトウェイは立っている。もちろん、ほかのカメラマンだって写真は立って撮るし、ナクトウェイだってかがんだり、寝そべったりして撮っているのだが、彼は「立っている」なのだ。背筋をまっすぐにして。燃えさかる家の前でまっすぐ立って写真を撮る彼の姿は、どこか不思議だ。論評には「聖職者」「哲学者」「苦行者」「孤高」という形容が並ぶ。私は「屹立」だと思った。こういう人は、大勢の中ではやっていけない。一匹狼になるべくしてなった人である。

 ナクトウェイはまた、信じている。ベトナム戦争や公民権運動に触発されて写真を始めた彼は、写真の力を信じている。写真で戦場を、貧困を、伝えることで、それらを止めることができると。しかし一方では、「人の不幸で得をしているのではないか」との疑念に常に苦しんでいる。彼の友人のロイターの記者や、元恋人の編集者など、この映画に登場するジャーナリストは、みなそのことに葛藤している。インドネシアの硫黄鉱山で労働者と共にガスに苦しみ、咳き込むナクトウェイは、だがしかし、やはり「帰る人」でもある。だからこそ葛藤する。写真の力を信じずには、撮ることはできない。

 画面に次々と映る戦争の被害者、貧困の悲惨さ、その写真。それに目を奪われがちではあるが、むしろジャーナリストとは何者か、考え抜いた人々の物語である。日本のテレビクルーたちよ、今すぐ見るべし!

(インパクション138号 2003.10)

【補】この後、イラクの取材でナクトウェイ負傷(軽傷だったらしい)、車に同乗していた別のカメラマンが重傷。映画を観たばっかりだったのでびっくりしたが、運のいい人なのかなー。重傷のカメラマンもその後死亡したという話は聞かないので、大丈夫だったのだろう。まあ、よかった。こうやって心配な人が増えるのさ。

(補足をいつ書いたのか記録がない……orz。「観たばっかり」とあるから多分、イラク戦争の最中の2003年か04年なんだろう。いいかげんだ、ぢぶん)

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