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【映画】プロミス

プロミス

ジャスティーン・シャピロ、B.Z.ゴールドバーグ監督・プロデューサー/カルロス・ボラド共同監督/カラー/104分/2001年度作品/アメリカ映画/原題「PROMISES」

何を彼らに約束できるだろう?

 イスラエルとパレスチナの七人の子どもにインタビューしたドキュメンタリー映画である。七人の子どもは、西エルサレムに住むユダヤ人の双子ヤルコとダニエル、東エルサレムに住むアラブ人マハムード、エルサレム旧市街に住む正当派ユダヤ教徒シュロモ、デヘイシャ難民キャンプのファラジとサナベル、そしてベイト・エル入植地に住むモイセ。インタビュアーのゴールドバーグ監督は、ボストン生まれエルサレム育ちのユダヤ人、シャピロ監督はバークレー育ちのユダヤ人、ボラド共同監督はメキシコ人だ。そして「比較的平穏な一九九七〜二○○○年」(映画字幕)、すなわち「第二次インティファーダ」直前までに撮影されている。「比較的平穏な」時期。切ないことばだ。

 映画は七人をとりまく日常を描きながら、アラブ人・ユダヤ人についてのそれぞれの考えや感情を明らかにしていく。観客である私たちがみるのは、それぞれがお互いに対して与えられたイメージの中でしか考えず(もちろん彼らなりの具体的な根拠のあるイメージなのだが)、それ故にむしろお互いに似通ったイメージを抱いている不思議さである。つまり「アラブ人はみんな、」そして「ユダヤ人はみんな、」土地を不当に奪おうとしている、僕たち全部を殺そうとしている、あいつらみんなやっつけてやりたい……。その中を奇妙な媒介者としてユダヤ人であるゴールドバーグ監督が往復していく。幾人かの子どもたちにとって、この映画はその往復運動による「お互いの発見」の過程でもある。

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 監督は問う。「アラブ人/ユダヤ人の子どもに会ってみたい?」。会ってみたいという子もいる。ムダだという子もいる。向こうが会いたくないっていうよ、という子もいる。デヘイシャの子どもたちが集まって討論する場面は印象的だ。そして実際にヤルコとダニエルがデヘイシャに招かれ、二人はアラブ人の置かれている状況を初めて知り、キャンプの子どもたちは、ユダヤ人みんながアラブ人に敵対しているわけではないと知る。

 そう、監督は確かに子どもたちの心に変化を与えた。その後は子どもたち自身が処理していくしかない。監督はファラジが泣いた通り、「帰る人」なのだ。監督がボールを投げた相手は観客のようでいて、実は当の子どもたちに、でもある。

 映画の最後、二年後の彼らが一言ずつ語る。私の目を引いたのは最初から柔軟だった双子やサナベルではなく、ハマス支持者でかたくなにユダヤ人を拒むマハムードだった。彼にとって、監督は初めて「出会う」ユダヤ人だ。マハムードの小さな変化が、私にはむしろ興味深かった。そしてさらに二年。プログラムによれば、彼らはみな無事に生きている。しかし、デヘイシャの子どもたちの上を絶望が覆い始めている。今、この瞬間に彼らが無事に生きているかどうかを心配しなくてはいけない事態というのは、本当に切ない。

 子どもたちは希望にみえる。だが子どもたちを希望だなどと思ってはいけない。子どもたちに希望「であること」を押しつけてはいけない。それは大人の責任放棄というものだ、ともあらためて戒めておかねばなるまい。
(インパクション132号 2002.9)


【補】「戦場のフォトグラファー」と合わせて読むと、私が「帰る人」にこだわっているのがわかる。これはもちろん、小田実のいう「帰る文学」に対応しているわけだが、映画も、監督の意図するにせよしないにせよ、「帰る」ことから自由ではあり得ない。

 字数の関係で触れられなかったが、モイセの妹が、イスをセッティング?しながら、いかに理想的な「ユダヤの奥様」になるのかを話す場面がいかにも無邪気で無性にかわいい。それでも、その無邪気さを支えているものに、こだわらねばならない。

 この映画が賞を取って、アメリカで確かサナベルと双子だったと思うが、再会している。エルサレムでバス爆破があるたびに、路線バスに乗るのをこわがっていた双子たちを思い出す。みんな、無事だろうか。ユダヤの子どもたちは徴兵される年齢になっている。ファラジやサナベル、デヘイシャの子どもたちも立派な「戦闘員」の年頃だ。無茶はしていないだろうか。希望はまだ彼等の中に残っているのだろうか。「この子たちが大人になる頃には」なんて言っている立場では、少なくとも大人たちはないのだ。(04.3)

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