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【映画】TOKKO 〜特攻〜

TOKKO 〜特攻〜

リサ・モリモト監督/カラー/89分/2007年度作品/米日映画/原題「Wings of Defeat」

 監督のリサ・モリモトは、渡米した日本人を両親に持つ日系二世。リサは亡くなった自分の叔父が特攻隊員であったと知り、自分の中の「カミカゼ」のイメージと叔父の思い出との違和感から、日本で特攻隊の取材を始める。ニューヨーク育ちのリサは、周囲のアメリカ人と同じように、カミカゼのことを「喜んで自爆する狂信者」だと信じていた。一方、プロデューサーのリンダ・ホーグランドは、日本生まれ、日本育ちのアメリカ人。特攻隊は「喜んで自らの命を捧げた無垢な犠牲者」だと信じていた。この二人が、そのどちらでもない「等身大」の特攻隊員の姿に迫ろうとする。この映画はそのドキュメントである。

 インタビューに答えた元特攻隊員は四名。全員が百里ケ原航空隊で訓練し、四五年三月に特攻の命令を受けている。学徒出陣で入隊し、二度出撃するも、二度ともエンジントラブルで帰還した江名。ベテランパイロットで教官でもあった浜園と、浜園機の偵察員で予科練出身の中島の二人は、目標の米艦隊に到達する前に敵機との空中戦を展開、帰還する。やはり学徒兵の上島は、出撃命令を受けぬまま、訓練中に敗戦を迎える。


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 そのほか、日本に住むリサの親戚たち、特攻隊によって沈没させられた米駆逐艦の生存者、大貫恵美子やジョン・ダワーなどの学者・作家、ホタル館の鳥浜明久らの証言・解説、日米双方のフィルムを織り交ぜていく手法は、実にオーソドックスなものだ。それはこの映画が元々日本人に向けてではなく、欧米に向けて作られたという経緯によるだろう。そのために「衝撃的な新事実」というものはほとんどないが、わかりやすい入門編としてよく整理されている。ちょっとうまく整理されすぎ、という気はするが。

 例えば特攻作戦発令の経緯について、大西中将が小田原大佐に語ったとされる談話——この無謀な作戦によって天皇に終戦を決意させようという目論み——に拠ってしまうのは危ういだろう。しかし天皇がこの成果を褒めたたえたことによって、さらに本土一億の民衆の総特攻隊化が進められていくさまは、当初の思惑を超えてものごとが転がり出した時の「取り返しのつかなさ」をあらためて突きつける。特攻隊は「(銃後の)愛する人を守る」どころか、「愛する人」を特攻隊化するプロパガンダの役目をも担わされたのではないか。だとすれば、個々の隊員の想いとはまったく逆の任務を知らないうちに負わされていたことになる。それは心底恐ろしい。

 だが、この映画で最も面白いのは——そして大切なのは、インタビューされたひとりひとりの微妙な差異ではないだろうか。沈没させられた駆逐艦の乗務員たちの集会でのインタビューでもそれは浮き彫りになる。特攻兵四人の間でも、学徒出身の「インテリ」と少年兵とではやはりニュアンスが違う。「日本やドイツに追いつめられたら同じことをしただろう」という元米兵の隣で、何か言いたげに口をもごもごさせているもう一人の元米兵、「(人生に)目的なんかなかったけど、生きたかったよ、死にたくはなかったよ!」という中島、当時の状況を「淋しい」ということばで淡々と語る上島。彼らの生の表情こそが、本作の眼目であるだろう。元特攻隊員を叔父に持つ彼女だから引き出せた話もあったにちがいない。その意味でも貴重な証言集であるといえよう。

(初出「インパクション」160号 2007.11)

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本物、ですから。

 「ね、ね、オレ特攻隊っぽくね?」

 は? と振り向いたのは、そこが映画「TOKKO」の上映館のロビーだったからだ。「今日の映画、絶対泣けるね!」とその青年は無邪気にはしゃぎ、連れの青年は困ったように「今日のは日系の監督の撮ったドキュメンタリーだからさ……」と言いよどんだ。

 映画が終った。「なんだよ、映画じゃないじゃん! だってストーリーがないもん!」と、先ほどの青年が怒りもあらわに連れにくってかかった。連れの方は「だってドキュメンタリーだからさ……」と今度は本当に困って言った。

 彼はきっと石原の映画でも見たんだろうな。それで今度の映画は「本物」だから、もっとカンドー的な話だと思ったんだろう。「本物」はそんなに甘くないのだ。

 昨今の戦争映画は「泣ける映画」として消費されていくものではあるが、ここまで来ると「消費」というより「搾取」に近くなってくる。「泣く」という自身の快楽のために、無自覚なまま戦死者を搾取していく世の中。しかも搾取すればするほど「愛国的である」とされるとすれば。「特攻っぽい」のがご自慢の彼は海自に入りたいようだったが、入隊後の彼の「ストーリー」は、どのように思い描かれているのか。 (初出「あにまる」10号 2007.10)

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 1本の映画で2本原稿を書きました(笑)。いやー、こういう客が後ろにいるってのは「オイシイ」っていうべきなのかなぁ。おねいさんは真面目に憂国しちゃったけど、オトモダチは可哀想だったな。「彼」は気づいてないかもしれないけど、「自分が死んだ後にカンドーして人が泣く様子」は、自分では見られないんだよ。オトモダチは自衛隊に入ろうとする「彼」に本当の「特攻」を見せたくて、この映画に誘ったのかもしれないなぁ。いいヤツじゃないか、トモダチ。

 そういえばこの原稿はインパの担当者に「珍しくほめてますねっ♪」と言われたのだった。日頃そんなにほめてないか? つか、これほめてるのか?(2008.2)

公式サイト(音声アリ)  米公式サイト  当日の日記


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