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【映画】海猿

海猿 

羽住英一郎監督/東宝/2004年作品

「人命救助」はうちが本家です。

 主人公たちが罰則で「腕立て百回」を何度もやるシーンを観ながら思い出した。大手印刷会社に就職した友人が、新人研修で「自衛隊体験入隊」に参加したときの話。やっぱり年中遅刻していた同僚が腕立て伏せを命じられ、最後の方はみんな泣きながら応援して奇妙な一体感が生まれていたとのエピソードである。友人は「自分もその時は涙が出たりしちゃうんだけど、今考えるとすごく気持ち悪いんだよね」と言っていたけど、まあこれもそういう映画。

 呉、海上保安大学校。潜水士となる訓練を受けるべく、十四名の海上保安官が集まった。ダイブマスターの資格を持つ仙崎(伊藤英明)は純朴な劣等生の工藤(伊藤淳史)とバディを組む。想像を超えた厳しい訓練、羽目をはずす休日。主任教官の源(藤竜也)はことあるごとに問う。「水深四十メートル。バディと二人、取り残された。使えるボンベはひとつだけ。残圧三十、片道一人分。さあ、お前たちなら、どうする」。

 プールでの最終テストを特訓と励ましで乗り切った工藤が、仲間とダイビングで過ごした後、憧れの看護士エリカ(香里奈)と海岸で過ごしていると、沖から助けを呼ぶ声が聞こえてきた。迷わず海に飛び込む工藤。しかし、工藤はそのまま帰らぬ人になった。源は、事故現場の死体引き上げ作業のフィルムを見せながら言う。「要救助者も助けられなかった。犬死にだ。一般人なら美談だが、我々にとっては恥ずべきことだ」。いつもの問いかけに、やはりダイブマスターの資格を持つエリート三島(海東健)はきっぱり答える。「体力のある方がボンベを使って浮上します」。

 工藤の死のショックから立ち直れない仙崎だったが、食堂のおばちゃん(杏子)から源の過去——「水深四十メートル」の真相を聞き、「決してバディを見捨てない」と源に宣言、訓練に戻った。そして最終テスト。水深四〇メートルにフランジを組む。最終組として、三島とバディを組み潜る仙崎。フランジ設営を終わって浮上しようとした矢先、急激に潮流が変わり、二人は命綱から引き離され流される。水深四五メートル、ボンベを損傷した三島は岩に脚をはさまれ動けない。船上の源は救助要請を出すが、仙崎のボンベ一つでは間に合わない……。

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 自衛隊ばかりでなく、保安庁にも映画ができるぞ! という海保の意気込みがものすごく伝わってくる。訓練生の部屋のロッカーには「打倒海自!」と大書きした紙が貼ってあるわ、居酒屋で「いや、海上自衛隊じゃなくて……」と女の子相手に説明せにゃならんわ、プログラムにまで「海上自衛隊との違い」なんて項目があったりして、切ないぞ、海保。

 無論、純然たるPR映画であるわけではなく、人気の漫画の映画化なのだが、かつて「沈黙の艦隊」が海自のバイブルとして潜水艦志望者を増やしたと言われた(ホントなのかな)のを髣髴とさせる。この手の「青春もの」って必ずそういう効果をもたらすのだ。それがわかっているので、海保も海保あげての全面協力態勢をとっている。巡視船七隻、巡視艇二隻、ヘリ三機動員の大盤振る舞いだ。そのほとんどはラストの仙崎・三島の救出のため、出航シーンだけが映ったりしたようなものだが、それにしてもそこまで出す必要があるんだか。力みすぎや、海保。

 映画そのものは、パターンに沿ったそれこそ「男の友情と過酷な訓練の青春もの」という以外に言いようがないのだが、きちんと泣き所も用意してあるし、女の子もそれなりに出てくるし(全然魅力的じゃないけど)、さすがは「踊る大捜査線」グループの制作だね、というところ。キャラクター的には、三島と初めにバディを組んだ川口(村田充)が、目立たないけど実はいちばん泣かせだったかも。目立たないが、冷静で自分の脚を引っ張る者は許さない、というエリート丸出しの三島に、反感を持ちつつも見捨てられないように必死についていく役所。しかも最後の訓練の前にバディ変更を源から命じられた時も、最終訓練で三島が遭難したときも、三島のバディは俺だという片思いがなかなか泣かせる。

 彼等は人命救助のエキスパートとしてそれぞれの管区に戻って行く。重装備化し、軍隊化しつつある海保(そもそも「コースト・ガード」なんだから)についてはこの映画ではまったく触れられていないが、「守ってあげたい」みたいに本務でもない「災害出動」でさも人畜無害に見せるよりはいいか。確かに「人命救助」は海保の「本務」だし。この映画を観て「海自って思ってたけど、やっぱり海保の方がいいかな」という若いモンが出れば、多少は良しと思っておこうか。五十歩と百歩の差に希望をたくせるかどうかは……「対テロ戦争」下ではあまり期待できないかにしても。そして海保諸君には、「人命救助」への熱い想いを思い出してもらおう。

 「エンドロール後に衝撃映像!」というので楽しみに待っていたら、「二作目」の予告だった。そりゃ、衝撃だわ。

(「運動<経験>」12号 2004.8)

【補】その後、原作全12巻読破。どうもこの原作者の佐藤秀峰って、ドラマ作りはうまいけど、キャラクターが作れないんだよなぁ。主人公、「ブラックジャックによろしく」と一緒。ラストエピソードの(御巣鷹山+日航機羽田沖墜落)÷2,みたいな飛行機事故はもう落涙ものだし、何度も読んだけど。そのエピソードも当時話題になったこと一通り、って感じで作者の取材の綿密さとか几帳面さとかはすごいと思うし、きっとまじめないい人なんだろうと思うけど。んで、海保諸君、どんなときでもどんな相手でもどんな立場でも、最優先されるものは「人命」だということ、もう一度肝に銘じて! そこが海自とのいちばんの違いなのだから。で、2作目、できるの?(補の記載時期不明)

【再補】できましたね……見てないけど( ̄▽ ̄)。そして海保の軍事化はさらに進んでいるのであった。やれやれ。(2009.1)

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