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【DVD】バレエの詩(プリセツカヤ)

バレエの詩(プリセツカヤ)

VC(VHS) 制作*モスフィルム/1971年/1974年公開
撮影・監督*ワジーム・デルベニョフ/バレエ監督*レフ・ポスペービン
美術*L.シェンゲリア
指揮*ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー/演奏*ボリショイ劇場オーケストラ

アンナ・バヴロワ「瀕死の白鳥」

 IVCのバレエシリーズにオープニングとして必ず入っているらしい映像。映像が残っていることの善し悪し、ってやっぱりあるなぁと感慨に耽ってしまう。無論、残っていることにこしたことはないけど、今観ると「うーむ」ではあるのよ。なにしろ「あの、伝説の、パヴロワの、白鳥」だからね。それはパブロワのせいではなくて、昔のコマ不足のフィルムだということは大きいし、今と比べりゃよしとされるプロポーションや動作が違うわけだから。「ニジンスキーの映像が残っていたら、伝説になったか」という命題は残るわな。

「バレエの詩」オープニング

 「白鳥の湖」3場のロットバルトの出の音楽と共に、黒鳥のプリセツカヤが現れてポーズ。白鳥の序曲に乗せてクレジット。字幕はすべてキリル文字なので、なんだかわかりません。タイトルは多分「バレエ」とか書いてあるんじゃないかと思う。

バレエの詩 [DVD]DVDバレエの詩 [DVD]

販売元:アイ・ヴィ・シー
発売日:2007/11/23
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瀕死の白鳥
音楽*サン・サーンス

 冒頭の部分は一部、クレジットとかぶり。舞台ではなくスタジオ録画。霧の中で踊る白鳥。あまり「柔らかい」というイメージの人ではないのだけど、腕のしなりがすごい。ニーナのように細かく波立ってるという感じとは違うのだけど。大振りなのかしら。山岸凉子の「アラベスク」でラーラの踊る「瀕死」の「大振り」というのをちょっと思い出す(本人の大きさが全然ちがうけど)。振りは、キーロフ版のと違うみたい(キーロフの中でもいろいろだけどね)。アラベスクが普通より多いような気がする。ポアントが凄いし、パ・ド・ブレが本当に滑るよう。ただなんとなく死にそうにない。生へ向かっていく感じ。この人の体型は今思うと、すごく現代的というか、当時としてはぬきんでていたんじゃないだろうか。今で言うところのギエムというか。そのせいか、どことなく中性的な感じのする白鳥ではある。

ライモンダ 3幕PDDから 
音楽*グラズーノフ マイヤ・プリセツカヤ/ニコライ・ファデーチェフ

 この後は、1演目ごとにクレジットが入る(もちろんロシア語)。
 まずはオープニングとしてベールを持ったライモンダの踊り。ライモンダの全幕を見たことがないので、どこに該当するのかはわからない。

アダージオ(コールド付き)
 コールド(男女)とジャンは白の衣装で、ライモンダだけが水色のチュチュ。ジャンもケープなしで、ほとんどコールド扱いだな。セットはなくて、全体にオレンジがかったもやがかかっているような感じ。黄砂の中のよう。コールドもみんな背が高くてすらっとしていてスタイルがいい。
 とにかく、ポアントの揺るがないことたるや、すごい。床に刺してあるとしか思えない。ポアントの先に五寸釘かなんかついてて、ぐさっと。ポーズも揺るがない。ちゃん、ちゃん、と音が鳴れば、ちゃん、ちゃん、とポーズが決まる。しかも止めの反動が全然ない。ピルエットも早いし揺るがないし、回った後のアチチュードやアラベスクの決め方もブレがなくて、背景に「ぴたっっ」と書き文字が見える。もうコールドとは全然格が違う。ジャンとも違う(笑)。がんばれよ、ファデーチェフ。いや、映画の趣旨からいえば正しいのかもしれないんだけど。ただやっぱり、ライモンダの結婚式というよりは戴冠式というか(笑)、プリセツカヤ、すげーー! という方にしか頭がいかないんだよなぁ。うーむ。

ライモンダのバリエーション
 ここの映像の傷が段違いに多い。もったいないなぁ。それにつけても孤高だなぁ。王子なしで十分、って感じの女王様だねぇ。ラストのちゃん、ちゃん、で入るキメポーズが、あきれるほど決まっている。ジャンのバリエーションとコーダはなし。

プレリュード(断片)
音楽*バッハ  マイヤ・プリセツカヤ/ニコライ・ファデーチェフ

 ジャケットに「バッハのプレリュードの断片」と書いてあるから断片なんだろう。だけど「断片」が「バッハのプレリュード」という曲にかかるのか、踊りにかかるのかは不明。振付も(字幕には出てるのかも知れないけど)不明。
 オープニングはヴェールを使ったPDDで、バロックっぽい音楽(バッハだってば)。
 本編はオルガン曲。プリセツカヤは白のロマンチック・チュチュで、ビスチェ部分に宝石というか、装飾のついたもの。ファデーチェフは黒のタイツで、黒のトップスに胸元にスカーフというかアスコットタイというか。司祭と巫女というか、ドラキュラと花嫁というか。なんだかファデーチェフが老けて見える。ほとんどスローモーション。プリセツカヤの身体能力のすごさはわかる。なにせ、これだけスローで再生してもブレがなくて美しいのだから。腕や脚の軌跡が本当に美しい。手首の動きなんか、実速でみるよりもため息が出るほど。でも飽きるの。まあ、70年頃のモスの感じがわかるという意味でも興味深くはありますが。うう。ストーリー、欲しいなぁ。ほんとはあるのかなぁ。

カルメン組曲
音楽*ビゼー、シチェドリン/振付*アロンソ
カルメン*マイヤ・プリセツカヤ/ホセ*ニコライ・ファデーチェフ/エスカミーリョ*セルゲイ・ラドチェンコ/牛(多分)*ナターリア
・カサートキナ

 なぜ運命=牛に(多分)とあるかというと、ジャケットに役名が出てないから(笑)。でも女性の役はほかに「二人のソリスト」しかないから、牛でしょう。画面のクレジットはやっぱりロシア語(キリル文字)なのでわからないが、「POK」なので「運命」というより「牛」なのではないかと思う。ジャケットにはツニガ(ホセの上官)のキャストが出てない。ちなみに「二人のソリスト」は、インペリアル・バレエの公演パンフには「煙草工場の女」とあるな(カルメンの同僚ってこと?)。

 オープニングは、手拍子とともに登場人物の紹介兼キャストクレジット。ほかの映像と撮影時期が違うのか、この演目だけプリセツカヤが妙におばさんくさい。あの頭のてっぺんにバラっていうのはやっぱり野暮いなぁ。牛は、例の黒の全身タイツだけでなく、唯一開いた顔面にも白いのっぺりした仮面を付けている。どこから外を見るのかは不明。しかもバックが黒なので、牛が全然みえない(涙)。本編の振りをモチーフにした踊りの後、運命とカルメンがぴったり重なったところで、手拍子が高まってメインタイトル。

 場面は闘牛場へ。観客席に座るツニガ以下の人々をなめるようにパンした後、緊迫感の中でカルメンのソロ開始。カメラがうまい。見下ろす仮面のような人々の中で踊る=主張することの潔さを感じさせる。周囲の冷たさが凄くないと潔さが出ないし、本人がちゃんとピンで立ってないとできないし、結構難しいソロだよな。ここでカルメンの孤高さがちゃんと出るかどうか、たった一人の異分子であることが出せるかどうかなんだなぁ。

 続いてツニガとホセのごく短いパート。ツニガの冷たい色気が出てますねー。二人の支配と服従の関係を現わすパートなのだけど、そこでの特別の関係、ホセの階級ということではなく(実際ほかの「男」も軍隊調の恰好をしているわけではないが、だが振りはあくまで軍隊調)、ツニガのホセへの執着は、その「冷たい色気」の中に出ているわけで。だからこそ、カルメンはホセにちょっかいを出すのよ、という動機の部分なのだが。

 有名なハバネラに乗せて、カルメンとホセとの出会いのPDD。挑むようなカルメンと翻弄されるホセ。舞台の縁の下より、それをのぞき見る白塗り(仮面?)の人々。この人々がすうっと下から頭を出してくるところって、本当にぞっとするよ。ここまではツニガの想定範囲内というか、ツニガの手のひらの上なのね。自由なカルメンと、それに屈辱を感じるホセ。ファデーチェフも太ったのかなぁ。上半身がもったりした感じがする。

 二人の女性ソリストと男性たち。この女性の「手裏剣しゅっしゅっ」振りが好き♪ 男性たちが軍隊というよりもギャング団のように見える。衣装のせいだろうか。再び、ツニガとホセ。繰り返される支配と服従の確認。そこへ二人の女とカルメンが諍いをしながら入ってくる。秩序を乱すもの=カルメンとそれを憎む秩序=ツニガ。女の掲げる仮面を拒否するカルメン。この「諍いをする三人の女」の振りが妙におかしくて好きなんだよな。カルメンとツニガの「ぷいっっ!」も好き(笑)。ツニガとカルメンの「ただならぬ関係」の予感。繰り返されるカルメンの「前に振り上げられた脚」はカルメンの主張される自我そのものなのね。

 ホセとカルメンの連行のPDD。「服従」のホセをあざ笑うカルメン。ホセのぎこちなさと、困惑。こういう困惑をまじめな男が「恋」だとおもっちゃうと怖いのよねー……って、それじゃヒラリオンじゃん(笑)。いや、カルメンはジゼルとちがって海千山千だから、明らかに「その気」にさせてうっちゃらかしちゃうんだけど。

 ホセ、帽子を外して、ソロ。この「帽子を外して」というところがミソ。カルメンを逃がしちゃって、いろんな意味で(自分に対する困惑とか、ツニガになんて言えばいいやらとか)途方に暮れてるのもありますが、これ以降のホセは私服で現れるので(単にツニガにクビになったからでもあるわけだが)、ここは「ツニガの支配からはずれる」象徴として捉えたい。そういう階級的な役割を外してしまえば、溢れるのはカルメンへの思いばかりなわけで…。つかめない何かをつかもうとするもどかしさなんだよね。このソロの間に変わっていくホセ、さすがにファデーチェフはうまいなー。挙手の礼という階級性を残したまま回転させちゃうアロンソもうまいねぇ。もともとジャンプを見せ場に持ってこない振りなのだけど、回転もシェネも綺麗だし。前半のぎこちない困惑から後半へのどうしようもない「焦がれ」が切ないですー。腰回りの焦がれ具合なんて、あなた…(笑)。このソロは曲も好きだし、一番好きなパートではあるのよ、とやかくいいつつも(笑)。恋は焦がれているときがいちばん綺麗なのね。

 手拍子に乗せて、二人の女性と男たちの椅子に座った踊り。画面悪すぎ。ハレーションがひどい。ちなみに私は「裏ボレロ」と呼んでます(音楽は「アルルの女」のファランドール)。この二人の女性はツニガの情婦のように見えつつ、ツニガそのものでもあり、男たちにとってはツニガから与えられた「慰み者」でもある。むろん、女性(二人とはいえ完全なユニゾンなので一人も機能は同じ)と椅子に座って囲んだ男性という配置もボレロ的ではあるけれど、この「秩序正しい、管理された誘惑」というのが、「裏ボレロ」の所以。そこにあるのは生命感や躍動ではなく、「(支配者から)許された範囲内での」慰安。だからこそ、最後はすべて崩おれるのではなく、最初のポーズにぴたっと戻って終わることが出来るわけだ。

 エスカミーリョ、スローで登場。先の場の続きで、今日の戦果を踊る。途中で興味津々のカルメンが入場。エスカミーリョもまた、ここでは異分子。彼は英雄ではあるけれど、英雄であるためには異分子でなくてはならない。あるいは英雄であるから異分子であることが許される(煙草工場の女工とはわけが違うと)。人々が徐々に去り、カルメンと二人きりに。このムキになってアピールするエスカミーリョも結構好き。山岸りょーこ先生ご執心だったラドチェンコですな、ちなみに。

 カルメンとエスカミーリョのPDD。この二人はお互いが同志だということを知っている。カルメンがエスカミーリョを求めるのは、この人となら「対等」でいられるという予感なんだね。あるいは自分より大きなものではないかという期待。押したり引いたりの駆け引きの中で、カルメンの脚の残像がすごくきれい。音楽が緊迫していく中、背後にツニガが現れる。二人は気がつかないともかまわないとも。ツニガの監視の中でお互いの瞳をのぞき込む二人。

 カルメン、ホセ、エスカミーリョ、ツニガのカトル。どちらを選ぶのか責めよる二人と、決めるのは自分であるというカルメン。二人とユニゾンしながらも常に背景で見つめるツニガ。とことん詰め寄るホセ、途中でカルメンにまかせて去っていくエスカミーリョの対比がなかなか。結構、このエスカミーリョは突き放し型なんだよね。カルメンにとっては、ホセのようにまとわりつく男よりも魅力的だし、多分楽(笑)。結局、エスカミーリョは「もう一人のカルメン」ではなかったのか? カルメンがそうありたいと願った、カルメンが「男であれば」そう生きることもできたであろう、カルメンの姿。運命をねじ伏せるだけの力を持った、強い、自立した、カルメンの「理想」。ホセとツニガの確執がもう一度確認される。

 沈んでいるホセの背後からいたずらっぽく近づくカルメン。恋人のようなカルメンとホセの「愛のPDD」。ちゃんとあんたの所に戻ってくるわよ、とでも言いたげなカルメン。しかし、カルメンはホセを愛していたのだろうか……? 成り行きでホセと暮し、それでホセに殺されるなら仕方もないと思ってはいるけれど、初めからホセはカルメンの求める男性ではなかったのではないのか? ホセに高く掲げられ、そして足元にくずおれていくカルメンは、その後を象徴しているようにも見える。でも照明が暗すぎて実のところあまり見えない(涙)。

 カード占い。運命(牛)を加えた五人の踊り。映像が悪すぎて(というか背景が黒いのが悪い)、白い衣装のエスカミーリョと、黒の衣装だが露出度が高いカルメンとホセの上半身以外はほんとに見づらい。牛なんかいるんだかいないんだか、よく見ないとわかんないよ(涙)。エスカミーリョが後を通るといるのがわかるくらい。ホセとエスカミーリョの間でエスカミーリョと心を通じ合うカルメンと、二人からカルメンを取り上げるツニガ。カルメンの存在そのものを許さないが、愛しているようにも見える。これまでのモチーフをそれぞれに繰り返しつつ、牛がカルメンをホセの腕に放り込み、ホセがカルメンを殺すことが暗示される。それを抱き起こすのはエスカミーリョではなくツニガだ。仮面を付けるホセとそれを拒むカルメン。これは決定的。

 闘牛場。君臨するツニガと人々が周囲から見下ろす中、牛登場。針金のように鋭いポアント。こんなにすごいプロポーションの人だったのね、というのがここまで来て初めてわかる(涙)。闘牛士登場。秩序正しくわき上がる人々。エスカミリオは闘牛士だから牛と戦っているのだが、それは同時に運命と正面から闘い、ねじ伏せることと同義でもある。外では闘牛場に行こうとしてホセに阻まれるカルメン(舞台中継とちがって別の場所で撮れるのね〜)。カルメンの目にはすでにホセはない。闘牛場での4人の踊り。カルメンとエスカミーリョの心が一瞬で通じ合う。ホセは運命と手を結ぶ。カルメンは「待ってて」とも「さよなら」とも思える表情でエスカミーリョから体を離す。これから最後の落とし前をつけねばならない。牛、カルメン、ツニガが一直線となる。

 最後に一瞬ポーズを決めて崩れるカルメン。ホセはそれを腕で受け止めるが、死の間際のカルメンは彼の手から離れているのだ。殺された牛のシュールな姿と群衆の歓呼に応えるエスカミーリョ。ホセとカルメンの前に現れるツニガ。そして群衆。それみたことか、なのか。初めての「自由」の結末がこれだ。しかし、本当にカルメンを愛していたのはツニガではないのか? 
 
エンディング
 「カルメン」のレヴェランスに続いて、白鳥、火の鳥など様々な衣装を着たプリセツカヤが次々と現れ、レヴェランス。石の花(銅山の女王)、キトリ、ジュリエットらしきものなど、四方八方から出てくる何人ものプリセツカヤ。やがてそれらが一列に並んで、レヴェランス。昔の合成フィルムだから、みんな明後日の方向を向いてお辞儀をしているのが妙だし、いかにも「回想シーン」っぽくて「……追悼?」みたいな感じもするけど、「プリセツカヤの持ち役はこれ!」なのが一覧できて、ある意味便利。センスがいいとは言い難いが。
 
 そんなわけで、結構好きな1本ですが、万人にお勧めというわけでもないな。デジタルでクリアーになるものならして欲しい。特にカルメンはもっといい状態で見たいよ(涙)。デジタル化してもそういうところはクリアーにはならないものなのかなぁ。('05.9)
 これを書いた時点ではまだVHSしかなかったんです。DVDに買い替えなかったけれど、どんなもんでしょうね?('09.3)

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