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【映画】マスター・アンド・コマンダー

マスター・アンド・コマンダー

ピーター・ウィアー監督/2003年作品/原題「Master and Commander--The Far Side of The World」(航海長兼海尉艦長 世界の裏側で)

 映画館の映画というのは、初めにたいがいコマーシャルが付いている。系列館の場合、最初に「映画の日」があって、それから宝石だとか近所の焼き肉屋とかサウナとかの広告があって、系列館の予告編があって、それらはこれから始まる本編に向かって集中度と気分を高めていく、映画館ならではの「お楽しみ」でもある。が、池袋の大手映画館で「映画の日」の後におもむろに現れたのは、陸上自衛隊であった。ああ、びっくりした。うわさのCM「陸自」編か、と思ったら、これが内閣府の<PKO>CM。まったく油断ならん世の中になったもんだ。大手映画館はどこでもやってるのかなぁ。情報待つ!

 それはともかく、本編はベストセラーシリーズが原作の本格海洋冒険もの。
 時は一八〇五年。英海軍のフリゲート艦(とはいえもちろん帆船だ)、無敗のカリスマ艦長オーブリー(ラッセル・クロウ)率いるサプライズ号に任務が下りる。フランスの私掠船アケロン号を追撃せよ。しかしサプライズ号はアケロン号の奇襲を受け、惨敗。士官候補生ブレイクニー(マックス・パーキス)はこの戦闘で右腕を失う。

 リベンジを果たすべく、執拗にアケロン号を追い続けるオーブリー。親友の艦医マチュリン(ポール・ベタニー)の忠告も耳に入らない彼は、嵐の中の無理な追撃で部下を失い、水兵らの不満のスケープゴートとなった士官候補生ホロム(リー・イングルビー)を追いつめてしまう。そして船員の悪ふざけからマチュリンが腹部に銃弾を受け、船内での手術は無理との事態に、オーブリーはようやくガラパゴスへ上陸し、つかの間の休暇をとる。しかし、回復したマチュリンとブレイクニーがガラパゴスで発見したのは、島の裏側を出航してゆくアケロン号だった……。


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 私掠船、というのはプログラムの説明によると、敵国の商船などを襲う民間武装船だそうだ。海賊とどうちがうかといえば、察するに「敵国の」というところだろう。だから本国の意向と無関係ではないし、本国の軍隊から追われることもない(多分。よくわからないけど)。まあ海軍が商船襲っちゃ、いくらこの時代でもまずかろうし、しかし敵国の進出を阻止するには必要な戦略なわけだから、こういうものが「必要」なのだろう。この映画では、英国の捕鯨船の補給基地であるガラパゴス近海の制海権を得ようとするフランスと、フランスの太平洋進出を阻止するイギリスの確執が描かれているわけだ。

 テレビCMを見た範囲では、ブレイクニーという少年(設定は十二歳!)と、父のように導く艦長、という話なのかと思ったら、全然違った。原作は「オーブリー&マチュリン」シリーズという全二十巻ものだから、映画も当然、二人の友情話が軸である。しかし、この十二歳の少年をはじめ「年端もいかない」少年士官候補生たちの存在は、あらためて階級国家としてのイギリスを突きつける。

 サプライズ号の乗組員には二種類いる。貴族出身の、でないまでもいい出自を持つ士官たち。そして半強制的に駆り集められてきた下層階級の水兵たちである。この階級差を超えることはあってはならない。だから、百戦錬磨の「熟練水兵」たちを指揮するのは、たとえ十二歳の初陣であったとしても、ブレイクニーら士官候補生なのだ。いくら彼らが「大人と同等の」危険な任務につき、同じ扱いを受けるとはいえ、変声期前の高い声で子どもが大人に命令するさま、それをおそらくは違和感なく受け入れる当の子どもたち。その水兵たちの足元では、パウダー・モンキー(火薬猿)と呼ばれる、士官候補生よりまだ幼い子どもたちが走るのだ。まったく「悪い冗談」としか見えない。

 その「悪い冗談」は、二八歳の士官候補生という、自信に欠けた気の弱いホロムに収斂されていく。次々と起こる悪い出来事を、水兵たちは「ヨナの呪い」としてホロムに背負わせる。艦長は、ホロムを軽視した水兵に、マチュリンの忠告にもかかわらず屈辱的な懲罰を行ない、それがさらにホロムへの反感を育てる。陸から遠く離れた、まったく逃げ場のない軍艦の中。「強さだけが彼らを押さえることができる」と力の支配を説く艦長に対し、結局彼は「自己の死」を選ぶしかできなかった。砲弾を抱いてまっすぐに沈んでいくホロムの姿を見ながら、ああ、海自でもそんなことがあったな、とつい思い出す。

 「ウィ・ハブ・シーマンシップ」と踊る、海自のCM(自衛隊金融かと思っちゃったぜ)。彼らの受け継ぐ「シーマンシップ」って結局これ、か? それじゃ救いなさすぎだ。いや「名誉と愛国心」だって救い難い。映画では、最終的にブレイクニーが師と仰ぐのが、艦長ではなく気のいい艦医だったところがちょっとだけ救いであるのだが。

 さて、ようやく拿捕したアケロン号だが、最後の最後で向こうの艦長が一枚上手だったってわけで、あくなき追いかけっこは続くのだ。男前のプリングス副長(ジェームズ・ダーシー)の顔に傷が増える前に追いついてね。しかし艦長、ほんとにカリスマ?
(「季刊<運動経験>」11号 2004.4)

 【補】「自衛隊金融」というのは自衛官向けの「サラ金」。横須賀にいくと看板が結構出ています。自衛官というのも転勤の多い職場なので、「踏み倒し」も多いようです。伝聞ですが。ちなみに横須賀の映画館には「自衛隊料金」があって、ちょっと割安。これは「ぴあ」の料金襴に載ってます。「マスター…」については、04年5月発行の「インパクション」で評論家の天野恵一先生もお書きになってらっしゃるので(笑)ご覧くださいまし(宣伝、宣伝)。パンフレットの文章が「あなたはどの美青年がお好み?」みたいな感じで笑っちゃったというか、「時代もかわったなー」と思ったけど、ジェームズ・ダーシーくらいだったな、好みだったのは。('04.5)

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