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【映画】マーズ・アタック!

マーズ・アタック!
ティム・バートン監督/1996年作品

九十年代の侵略者たちの正体は……

 パロディ映画である。火星人襲来モノである。まあ火星人に限らず異星人襲来モノは古今東西山ほどあって、どれが本家でどれがパロディだかわかりゃしないんだが、全体としては『博士の異常な愛情』を思わせる作りではある。ともあれ昔のトレーディングカード(よく子どもが集める、野球選手だのアニメキャラだの大鵬だのってアレ)を原作に、結構エグイ映画に仕上がっている。

 ある日発見された火星からの大量の空飛ぶ円盤。ホワイトハウスでは、楽観的な大統領(ジャック・ニコルソン)と性善説・平和主義者ケスラー教授(ピアース・ブロスナン)、軟派野郎の報道官らがタカ派デッカー将軍を退け、火星人と歴史的友好を結ぶべく、テレビでこの事態を発表する。ノリス家の長男は、火星人から国を守るべく軍隊に志願。気の弱い次男はやや阻害された気分でちょっとボケた祖母(シルビア・シドニー)の世話をする。芸能レポーターと報道記者(マイケル・J・フォックス)は火星人報道の主導権を取ろうと躍起。ラスベガスのカジノでは、バツイチの元プロボクサー・バイロン(ジム・ブラウン)が臨時ニュースを見ていた。さて宇宙語翻訳機なるものを作った大統領スタッフは、火星人の「我々は友好のために来た」という言葉を信じてアリゾナの砂漠で火星人の訪米歓迎式典を行おうとするのだが、火星人は態度を一変、大虐殺を始める……。アメリカの運命やいかに?! ジャンジャカジャンジャンジャーン。

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 パロディだから、それほどSF映画に熟知していない私にはよくわからないギャグも随分あって、後でプログラムを読んで「へえええっ」と思ったりもしたわけだけど、それにしてもエグイ。あ、これはここでこういうふうに笑わせたいんだな、ということはわかるんだが、笑いたい気分には最後までならなかった。何だか「オイオイ、冗談になってないぜ」ってな感じ。まあ、私自身スプラッタはてんでダメなタイプだから、ハナから間違っちゃいるわけだ。それでも火星人が熱線銃で焼き払ったアメリカ人はみんな赤や緑のキッチュな骸骨になっちゃって、見ようによっちゃカワイイし、「脳味噌むきだし、ギョロメの骸骨」の火星人も、さしてカワイくもないがそれほどグロくもない。

 結局、「気分の悪さ」は、悪意はおそらく不在であろう(ティム・バートンだからあるのかな、やっぱり)この映画のカリカチュアのエグさ、断片的で活かされてこないギャグと設定にプラスして、それを中途半端に支える映像のリアルさにあるようだ。

 タカ派イテマエ主義代表デッカー将軍は、こうした映画に皆勤賞のタイプ。頭っから武装侵略者火星人せん滅一本が方針。ことあるごとに大統領に「核兵器使用許可書にサインを!」と迫る。対する平和ノーテンキ主義ケスラー教授は「高度な文明を持つ民族は平和主義者である」というテーゼの下に火星人との友好を主張する。大統領はなるべく事を荒立てたくないし、大衆的支持も欲しい。ついでに「歴史的偉業」による、後世への名声も欲しい。やたら国連なんてものには相談しない。さすが、世界はアメリカ、アメリカは世界。てなわけで最初の会見が大虐殺に終わった後も、ケスラーと大統領はまだご都合よろしく解釈する。「ヒッピー(死語だな)の放った鳩が、実は火星人にとっては戦争の象徴だったのだ!」異文化交流は全く難しい。ケスラーときた日にゃ熱線銃を乱射する「火星大使」の前に飛び出して「文明人らしく話しましょう!」とか説教たれたあげく、生け捕りにされて解体されちゃうのだ。もちろん愛国心だってちゃんと見せる。歓呼の声に送られて祖国防衛に出かけたノリス家の長男が戦友の銃を拾って飛び出すと、お約束通り銃は弾切れ。そしてちゃんと軍と家族に慰霊してもらう。

 こうしてタカ派も平和主義者も愛国主義者も円月殺法で撫で斬りにしたあげく、ホワイトハウスは壊滅。結局のところ国を救うのは、心優しい末っ子と老婆の無作為、それに強いパパ(これもお約束通りバツイチ)の家族愛というのは、それ自体イデオロギーであって、パロディにゃなんねぇよな。

 こうした「楽しい絵空事」は、それこそかつての、特撮らしい特撮の中でこそ「絵空事」としてのリアリズムがあって、こう映像がリアルになっちゃうと物語としては宙に浮いた恰好になる。冒頭の五十年代型空飛ぶ円盤の大襲来がレトロゆえに見事なのに比べ、本編が半端にリアルなのも笑えない一因だったように思う(スパイ役のリサ・マリーの「火星人歩き」は笑っちゃうほど絶妙だが)。特撮がSFXになって失うものもあるわけだ。

 しかし侵略者火星人達を見てると、「うーん、これぞアメリカ」という気がしてくる。相手の人の良さ(?)につけ込んで何度でもだましてくる手口も、「逃げないで下さい、私たちは友好のためにきました」と連呼する翻訳機を先頭に、町中殺戮し続ける部隊も、つい「そりゃあんたたちだって」なんて突っ込みを入れたくなるぞ。プログラムによれば、「共産主義者の恐怖を代弁するかのような」「五十年代の侵略者、八十年代の友好的宇宙人、そのどちらとも違う九十年代の宇宙人像」だそうだが、「九七年バージョンの侵略者」がアメリカだった、てのは考えようによっちゃ偉大なパロディかも知れない。

 映画の翌朝テレビをつけると、ペルー特殊部隊強行突入のニュース。やれやれ(嘆息)。

 閑話休題。大量虐殺ギャグで笑えなくなるってのはやっぱり年をとった証拠か、教条主義になりつつあるのか(多分前者)。マイケル・J・フォックスの前髪前線の後退は、これもパロディなのか、それとも……。(「月刊フォーラム」1997年7月号)

【補】ウツ目のときにこういう物を観に行ってはいけません、という代表のような原稿(笑)。でも、ウツ目だからって、締切は待ってくれないのよー。とにかく、マイケルの妻の芸能レポーターが頭をチワワと入替えられて、チワワ頭の女性と女性頭のチワワに改造され、生首になってしゃべりまくるケスラーと愛を語るというのが、本当に吐きそうになるほどイヤだった。大昔のNHKドラマ……タイトルなんだっけな「なんとか(負いきれないとかいう感じの)な負債」……以来、喋る生首はトラウマなのさ。でも多分、こういうの好きな層は結構厚くいるんじゃないだろか。ペルー強行突入は、ペルーの日本大使館が占拠されていた事件の最後のところ。特殊撮影とSFXの差異はその後、スターウォーズの所でも書いているな。相変わらずハリウッドは「強いパパ」イデオロギーを振りまいているし。最後ニューエイジの勝利になっちゃったのも、ハリウッド風と言えなくもないが…。それにしてもジャック・ニコルソン、仕事選べよ。(05.7)

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