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【映画】ブラックホーク・ダウン

ブラックホーク・ダウン
リドリー・スコット監督/2001年作品/原題「BLACK HAWK DOWN」(ブラックホーク墜落)

米兵、憎悪と出会う。

 このところ、戦争映画ばかしだ。このコラムもまた戦争映画になってしまった。
 さて、これは実際の作戦行動を題材に、ドキュメンタリータッチを目指した映画。

 一九九三年、ソマリア。アイディード将軍を排除すべく、米軍は将軍の側近の拉致作戦を繰り返す。十月三日、アイディード派幹部集会を狙い、側近を拉致する作戦を開始。陸軍特殊部隊レンジャーとデルタは首尾良く捕虜を車両部隊に収容するが、民兵と激しく交戦。戦闘ヘリ・ブラックホークがロケットランチャー弾を受けて撃墜される。乗員を救助すべく、墜落地点に集結しようとする陸上部隊は激しい市街戦の中で負傷者を増やしていく。車両部隊はバリケードと砲撃の中で迷走を続け、そうこうするうちに二機目のブラックホーク撃墜。車両部隊は合流を断念、基地に帰還する。残された九九名の陸上部隊の前にパキスタン軍戦車、マレーシア軍装甲車を含む救援部隊が到着したのは翌午前一時五五分、一時間で終わるはずの作戦は十五時間に及んだ。この戦闘で米側死者十九名、負傷者七三名。ソマリア側死者は未確認ながら千名を超えると見られている。

 映画の主軸となるのはレンジャーの班長の一人、エヴァーズマン(ジョシュ・ハートネット)と彼の班の隊員でデスク要員だったグライムズ(ユアン・マクレガー)、ブラックホークの操縦士で墜落後捕虜となるデュラント(ロン・エルダード)。とはいえ登場人物が多くて見分けるのが大変だ。

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 冒頭、ヘリで偵察する米兵たちのシーンが入る。食糧配給の困難さと武力で略奪する民兵と、それを「任務外」としてただ見ているしかない悔しさと。それがアメリカが介入する理由と正しさである。この映画について、ソマリア側の視点がない、民兵が凶暴に描かれ過ぎる、公正でないとの批評がある(例えば『朝日新聞』三月二二日夕刊)。それに対し監督は「ソマリア側の意見も描いている」と反論(前掲『朝日新聞』)し、インタビューなどで、ソマリアの介入が善か悪かの判断を下しているのではなく、介入の是非を問いかけるものだと強調しているが、正直、そういう映画だとはあまり読めない。最初に拉致されたアイディード派の要人や、デュラントを捕虜にした民兵のリーダーのわずかなセリフでそう主張するのは無理がある。しかし、撃墜され、負傷して動けなくなったデュラントの絶望感、恐怖、そして実際に襲いかかってくる、とてもすべてが民兵だとは思えないソマリアの人々の剥き出しの憎悪は、「ソマリアの意見」でもある。

 ブラックホークはアメリカの威信でもあった。それが撃墜されたとき、アメリカの威信もまた、地に墜ちたのだ。車両に収容しきれずに走って脱出するレンジャーたちにとって、おどけて併走する子どもたちも手を振って応援する大人たちも、安全地帯である競技場に待っていたサーバント姿のパキスタン要員さえも、屈辱的に映る。「ソマリアの人々を助けなければ」(エヴァーズマン)との決意でやってきた米兵がなぜ、憎悪の対象となるのか。九・一一の事件を振り返る中で、「なぜ我々は憎まれるのか」考え始めるアメリカ人が、それでも増えていると聞く。アメリカの中から「この映画は公正か」との論議が起こったことに、小さな光を感じる。「我々はもっと愛されているはずだ」という自負にたっての批判でないならば、ではあるが。個人的に印象的だったのは、墜落現場にデルタ隊員が到着したときの、住民たちに文字通り身ぐるみはがれたブラックホークだ。おそらく屑鉄として売るのだろうが、そんなところにもソマリアとアメリカの距離がある。

 しかし基本的にはこれは軍隊の美しい仲間意識、「一人も残して帰らない」という鉄則の元の救出劇である。この鉄則のために死者・負傷者が雪だるま式に増えていく有様は、不条理を感じさせずにおかない(本部の指揮のまずさはパンフレットに白石光が分析している)。救助するはずの全員が救助される側にいつしか追い込まれるのはアメリカの奢りと誤算からだ。内向きに内向きに結束しつつ、外へ外へと拡大していく軍隊の、さらにアメリカの本質は、ここでも描かれている。ついでに本部要員がちゃんとした「兵士」になるサイドストーリー。「プライベート・ライアン」ほど露骨で嫌らしくはないが、やっぱりあることはあるのだ。

 そして映画の結論。「我々は仲間のために戦う」。だったら自分ちでやってくれよ、迷惑だから。いつもそこに帰っちゃうのがアメリカ映画だけどね。だが、「英雄なんか望んでいない。ときとしてそうなるだけだ」というこの映画を見て、英雄的戦闘に憧れた青年が戦闘機を撃墜され、泣きながら走って逃げるのが「エネミー・ライン」だという気がしないでもない。

 けどまあ、「人道的介入」でここまでやっちゃうアメリカってのもスゴイ国だよなあ。やっぱりアメリカはリベンジせずにはいられない国なのか。

 アメリカも日本も、他国の憎悪と向き合うことに慣れていないよな、つくづく。

 昨年三月にクランクアップしたこの映画と「エネミーライン」あたりが、九・一一以前の最後の映画になるだろう。ここらで一連の戦争映画についての考察や、「エネミーライン」との検討もおもしろいのだが、機会を待ちたい。
(「季刊運動<経験>」5号 2002.4)

【補】全編ほとんど撃ち合いで、やたらやかましい。自衛隊が今進めている「都市型ゲリラ戦」(対テロ戦)というのがどういうものかを見るのにはわかりやすい映画なので、そういう意味ではオススメ。

 イラクでも、ブラックホークはばたばたと墜ちた。意外と墜ちやすい機なのかも知れない。高所恐怖症の私は、ブラックホークみたいな胴体に穴の開いたヘリはすごくイヤなのだが、この映画では本当に人が落ちる。怖いよぉ。リトルバードという強襲用の小型ヘリは、あろうことか、胴体の外側に兵士用のベンチがついている。もはや人間の乗るもんじゃねぇよ。

 04年3月、イラクのファルージャでアメリカ人4人(元特殊部隊だったらしい)が殺され、遺体は引きずり回されて橋から吊された。今、ファルージャは包囲され、10日足らずで650人がアメリカ兵に殺されている。イラクでもソマリアでも、米兵は本当に「歓迎される」と思っていたらしい。アメリカは相変わらず憎悪と向き合うことに慣れていない。(04.4)

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