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【バレエ】雑記帳 (4)  極私的シヴァコフ狂走曲05/06

 05年の夏、目の前で変わっていくシヴァコフを見ながら、次のシーズンの方針を立てた。彼の全てのレパートリーを観る。この冬に起きるだろう「何か」を漏らさずに観たい。固いところでまず「眠りの森の美女」を押さえ、「白鳥の湖」は男性キャスト発表までギリギリ待つ。そうこうする間に「くるみ割り人形」のエフセーエワの相手役がシヴァコフに変更されたとの情報が入ってそちらを押さえる。ファジェーエフの「ドン・キホーテ」は彼がエスパーダ(今年はトリプルキャスト)に入る可能性は高いが、会社を休まねばならない。そうするとルジマトフの「ラ・シルフィード(付・騎兵隊の休日)」は諦めることになる。カンパニーが来日してからキャストの問い合わせをして決めるか、と思っていたのだが、チケットの出具合を見て「ラ・シル」放棄を決意。最後まで逡巡したのが、実は「ドン・キホーテ」の西宮遠征だった。主としてダンナ対策と金策である。これはかなり迷ったが、とりあえず友人からの後押しと、これもチケットの出具合で決心。経済的にはかなりキビシイ気持ちではあったが、後に懸賞論文を当て、ダンナの心証ともどもクリア。万全だ。求めよ、さらば与えられん。

 05/06の冬のシーズンは「くるみ割り人形」で幕が開いた。例によって固めの(コワイ)顔から始まる。ははは、また無愛想なー♪ などと笑ってはいられない。夏シーズンに見え隠れしていた「パートナーへの愛情」が前に出て、ノーブルっぽくなりつつあった。どうしちゃったんだ、シヴァ! これがサポート下手で舞台マナーが悪くてパートナーリングがなってなくてオレ様ばんばんなシヴァコフかよ!(ああ、我ながらなんて言いぐさだ……orz) 気になったのは夏以来微妙な変化を見せるオレ様度。そう、オレ様じゃないシヴァコフなんてシヴァじゃない。このまま去勢されてそこそこのノーブルダンサーになるのか?

 年が明けて1本目が「眠り」。こちらは定評のある(?)4人の王子。おおっ、演技が爆裂している。ここしばらくエスパーダにしろ4人の王子にしろ、クリギン兄ぃとセットで動いていたようだったが、兄ぃが演技力強化(?)に一役買っているのか。一舞台ごとにこちらも向こうもテンションが上がっていく。コシェレワとの「白鳥」はもう、どうなっちゃってるんだか、みたいな世界に入っていたな。……まったく、あのグランアダージョときたら。あんな切なげな顔のシヴァコフも初めてだけど、観てる方が赤面するようなアダージョを踊るなっ(苦笑)。ま、それはおいといて、「黄昏の王国の絶望する王子」を踊りきったのは驚き。こんなに「眉間にしわ」が似合うようになって。こんなに王子らしい仕草や佇まいができるようになったなんて。しかも「絶望」付きで。「絶望」とは対極の彼が。

 そして双方のテンションが上がりきったところで、西宮での「ドン・キホーテ」を迎える(ああ本当に、ケチらなくてよかった)。この舞台については、いくら語っても語り尽くせない。バジルでデビューして7年。シヴァコフはこの日のために全ての調整をしたのではないかと思えた。出だしの緊張したペレンに昨年の再現かと思えた舞台を、彼は登場した瞬間にすべてひっくり返した。あの笑顔ひとつで。それはあの日シヴァコフ自身が(そしてルジマトフも)果たせなかったことに違いなかった。ペレンだけでなく彼にとっても、この舞台は昨年のリベンジでもあったのだろう。優しかった。頼もしかった。「オレがいるから何の心配もいらないよ」。あり得ないと思う余裕すら、こちらにはなかった。たった2時間余りの舞台の上で、彼はまだ変わり続けていた。3幕の彼は、自由だった。頭の上には青空しかない。見慣れたはずの彼のGPDDなのに、あれほどに優しくて穏やかな彼を見たことはなかった。あれほどに解放されたヴァリエーションを見たことはなかった。彼の中には踊ることへの喜びが、自分が自分であることの確信だけがあるように見えた。「見ろよ、これがオレだ!」 羽化だ、と思った。自分でも大仰な、という気もする。だが、2令から3令へ、4令へと目の前で脱皮を繰り返してきた彼の「羽化」だ、と思えたのだ(でもイメージは蝶ではなくトンボ)。「みんな、ありがとう!」 カーテンコールで手を振り続ける彼は、幸せの塊だった。

 シーズンが終わったような気がした。シヴァコフはこの後、熊本で「白鳥」を踊り、東京へ戻ってCM撮り、ファジェーエフを迎えての「ドンキ」でエスパーダを踊る。この日は体調も悪かったと聞いたが、西宮とうってかわって重力が彼の頭からのしかかり、思うように動けない焦りばかりが伝わってきてつらかった。そのつらさが逆に、こちらの気持ちを高ぶらせた。

 「バレエの美神」最終日。「ダジラード」をほどほどに終え、「ローズアダージョ」を踊る彼は、何かをひとつ越えたような顔をしていた。相変わらず集中力は欠いていたが、時折泳いでいた視線がすっと止まったときに、ああこの人はこんなに美しかったのだな、と思った。くるくるの巻き毛ではなくクラシックなカツラだったせいか、それとも単に病み上がりだったせいか。フィナーレでも無表情な時の(仏頂面でもない)彼の顔は、余分なものを洗い流したように、驚くほど端正だった。考えてみれば、顔自体を美しいと思ったのは初めてだ。「かっこいい」「可愛い」は散々使われてきたし、ポーズや動きを美しいと思ったことはあったのだが。長いツアーを終えた安心感もあったろうが、それだけではない何かを終えたのだな、と思った。とりあえず、彼の「改革」は一段落したのだろう。

 だが、こちらはそれどころではない。彼の帰国から2週間を待たずして、auのCMのオンエアが始まった。初めて見た瞬間に「まさか」と思った。誰も気付くな、とすら。大体マールイのCMといえば「カレーマルシェ」だ。今回はわけが違う。たった15秒の中に、今の彼が詰まっていた。大きなジュテ、ダークサイドな彼、少年の彼、踊る喜び。続いてディレクターズカット版の公開。案の定、ブレイクしたかにみえた。今思えば公演中でもないわけで、一過性のものだったようではある。本当にファンがついたかどうかは夏以降はっきりするだろう。だけど渦中にあってはそんな余裕はない。話題が広がるにつれ、急速に彼が遠のいたような気がして、かなり焦った。次いで腹をくくった。それならそれで、大きくなれ。今日ついたファンが明日いなくなっても、私が見届けてやる。どんなに踊りが変わったように見えても、彼自身が変わったわけではない。シヴァはシヴァだ、と当たり前のことを確認したのがこのシーズンでもあったのだから。(06.4.2 )

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