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【バレエ】雑記帳 (5)  シヴァコフをめぐるパートナーたち

 さて、シヴァコフのパートナーたちについて、と言ってみたのだが、この妙に器用な(あるいは妙に不器用な)ヤツときたら、ガラを含めれば、現在の主役級ソリストとは、ほとんど踊っていたりする。ロマチェンコワ、クチュルクともジゼル全幕を踊っているし(なんだってシードロフ先生が、あんなに早い段階で彼にアルベルトを踊らせる気になったのかは、ちょっと謎)。ここでは、この1年、私が見た範囲での印象などを。


【エフセーエワ】05年末の「くるみ割り人形」で共演。事前にe+のインタビューでエフセーエワ本人が「直前にパートナーがシヴァコフに変更になった」と語っていたが、誰が予定されていたかは謎のまま(笑)。何となく想像できないなー、と思いつつ見に行ったけれど、これは当たり。シーズン初日だったせいか、シヴァコフの方が緊張気味ではあったけれど、大きさ・雰囲気とも意外に似合う。もう少し場数を踏んでこなれてくれば、かなりよいペアになるのではないかと。シヴァの方が不必要に頼もしい……というよりも逞しい王子(笑)だったけれど、エフセーエワを相手にこれだけの存在感が出せればOK。エフセーエワもうまい人だけど、相手がかすんじゃうこともあるからねぇ…。彼女のガムザでは、シヴァ@ソロルも尻に敷かれると思われ。おそるべし、エフセーエワ。
 (追記。その後、エフセーエワはマリインスキーに移籍してしまいましたとさ……(ノ_-。)。もっとも、幾度かまだパートナーを組む機会はあるようです。見たい。'09.5)

【コシェレワ】意外にも、今年いちばん教育的指導が必要と思われたペア(笑)。まったく、おまいらは……。いや、いいんですよ、息もぴったり、ビジュアルもよし。でもこういうお姉さんが相手になると、シヴァコフの悪いところも露呈。まあ「絶望する王子」としては、あまり頼りがいがあってもよくないのかもしれないけどな……。それでももう少しオデットを包むような頼もしさや、大人の雰囲気が欲しかったところ。グランアダージョは不許可。いいんですよ、息もぴったり、ビジュアルもよし。熱い吐息まで聞こえてきそうなシヴァは生ツバものだったし(←お下劣な言いぐさ。それにしてもあのぶっきらぼうなシヴァがここまで来るとわ)。でもグランアダージョでは不許可。せめてブラックスワンで。というか演目を考えるように。エスパーダと踊り子のペアは(今年は見られなかったけど)マールイ随一と思われ。

【シェスタコワ】うーん、保留(笑)と逃げたいところ。昨年夏の「海賊」はよかった。「パキータ」はもう少し拮抗しないと。まあ確かに「魔性の女王と囚われの若き騎士」というのも悪くはない(メルヒェンだなぁ……ていうか「銀のいす」か?)。というところなのだが、シェスタコワがこの冬シーズンの路線で来るなら話は別。ただでさえベクトルが違う二人だから、ハウリングを起こしそうだ。とはいえ、夏ガラでいえばもう3年(以上?)も組んでいるわけだし、スーシャは頭のよい人だから、二人で合わせを考えてくると思うのだけどねぇ…。というわけで、この二人に関しては、事前にお互いのイメージをどこまですりあわせられるか、にかかっていると思われ。

【草刈民代】まっ、私も言いたいことはなくはないのだが。けれど、やっぱりシヴァコフにしてみれば、彼女のおかげでできた貴重な体験というのも、いろいろとあるわけだからね。来日時の公演数が増えるだけでなく。ウエストモーランド版のジークフリードを踊るなんて彼女なしにはあり得なかったわけだし。直前にぽしゃっちゃったけど全幕デジレの話もあったし、「美神」にしても彼女のおかげでおミソながら出られたのだろうし。それ自体はシヴァの財産なんだからさ。ということで、本気でプティを踊りたいなら、きちんと食いついておきなさい(笑)。せやけど民代さんを落とすためにシヴァに言及されたりするのを見るとなぁ……。そういうところでシヴァを使わんで欲しいなぁ……。

【ペレン】ペレンというダンサーには、実のところ昨年あたりまでは「シヴァコフのパートナー」という以上にさほど興味を持っていなかったのだな(ひねくれ者だから、スポットが当たる人には興味がなかったりする)。それでも幾通りかのペアを見て、お互いにいちばん「対等なペアとしてのよさ」は持っている相手だし、そのくせ息が合っているのかいないのかよくわからなかったり(←単にシヴァが下手なだけともいう)、やきもきしながら見てはいた。そう、この「やきもきしながら」というのが実はミソ(笑)。それが05年冬の「ドンキ」で来ちゃったのね。彼女の表現についてはいろいろ言われていたけれど、彼女なりの「表現したいもの」がないのではなく、今までも出せなかっただけなのではということも、この舞台であらためてわかったような気がする。
 ワガノワの優等生という肩書き、入団直後からの抜擢と矢継ぎ早の主演、スターとの共演、個性からずれたキャッチコピー、カンパニーの中での立場……。彼女がそれらの中で何を思っていたかはわからないが、舞台の上での余裕のなさは、それまでも時に感じられた。もしかしたら「失敗したらどうしよう」が先に立つタイプなのかな、とも。もっとゆっくり時間をかけて育ててやればいいのに、と思ってはいたが、どこかでペレンと彼女の周囲とがリセットすることが必要だろうと、あの「ドンキ」を見ながら思った。と同時に、これから出るであろう言説を思い浮かべ、気が重かった。案の定、シヴァがパートナーならこんな書かれ方はしなかったろうに(そもそも客も少なかったろうが)と思うものも多かった。切ないねぇ。彼女が舞台の上で心からリラックスして、「表現したいもの」を出すことはできるのだろうか? それはお前の役目じゃないのか、シヴァ? 
 さて、05年夏。ルジマトフとの「影の王国」は相変わらず硬質で、ソロルの愛を試そうとしているかのような冷たさが、この場面のニキヤとしては私の好み。シヴァコフとシェミウノフとの「海賊」では、シヴァコフがややパワーダウンかと思われたが、シェスタコワの時に比べて慎重な、「壊れ物を扱うような」サポートだったのが原因かと。秋のガラでは、シヴァコフとの時は普通によかったのだが(いや「竹取」の何が普通かと言われると…)、ファジェーエフとの「海賊」は噛み合わない、というよりも体が重めの感じ。
 06年冬シーズンの終わり、「ダンスマガジン」のインタビュー記事で、ペレンの脚の骨折について、さらっと触れられていた。かなり悪かったようだ。昨年は2月に帰国し、4月の本拠地での公演には出ていたそうなので、それから8月に来日するまでの間のことだろう。8月は「治りたて」の状態だったのかもしれない。それを考えれば、夏に「影の王国」を1日降りたらしいというのも、太ったと言われたのも、体が重くなったと言われたのも、脚が弱くなったと言われたのも、シヴァコフの慎重なサポートにも、得心がいく。「大変な時期が何回かあった」というから、精神的にもかなり参ったのだろう。けれど、ここで強制的に立ち止まったことで、ペレンと周囲にとっては、リセットしてこれまでを見直すいい契機にもなったのではないかと、この冬の公演を振り返って思った。踊れなかった時間を、ペレンは結果的にはうまく使えたのだろう。
 西宮で久しぶりに見たペレンは、彼女のキトリを出していたと思う。笑顔が出るようになった分、ルジマトフとのニキヤは甘くなってしまった気がするが、カーテンコールで「よその世界」へ行ってしまったようなルジマトフを置いてレヴェランスを繰り返す姿に、強くなったなと思った。昨年の舞台を払拭するためにも、ペレンはもう一度ルジマトフと全幕を踊るべきだと思っていたが、この「バヤデルカ」を見て、それは大きなお世話だったな、とも思った。いいじゃないか、それで。スターとの共演よりも大切なことはあるのだから。とりあえず、彼女は今年、しきり直しのスタートラインに立ったのだと思う。
 結局のところ、ペレンのファンなのか? と問われれば「んー?」と思ってしまったりもするのだが、彼女のサポーターであることに間違いはない。やきもきすることの方が相変わらず多いような気もするが、その分彼女を愛してるな、やっぱり。逆にどんなに「すごいなー」「うまいなー」と思っても愛せないダンサーもいるわけで、技術や何か、そうした評価と愛情はまた別のものだとあらためて思う。要するに、ペレンにしろシヴァコフにしろ、「馬鹿な子ほどかわいい」なのかもしれない。まったく、おまいらは(笑)。
 
 シヴァコフに話を戻すと、現時点での彼と、お互いのいちばんいい部分を引き出し合っているのはペレンだと思う。ペレンにとっては安心して自分をまかせられる相手であるし、その分シヴァは優しさも頼もしさも、「対等な」関係の中での若々しさも出せる。でもね、誰が相手になろうが、やっぱり結論はひとつ。
 お前がしっかりすればすむんだろーがっ!
 ああ、やきもきする(苦笑)……。

('06.4.12)

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