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【舞台】黒蜥蜴

2013.4.27 黒蜥蜴 ル・テアトル銀座

原作・江戸川乱歩 脚本・三島由紀夫
緑川夫人/黒蜥蜴:美輪明宏 明智小五郎:木村彰吾
雨宮潤一:中島歩 岩瀬早苗:義達祐美 岩瀬庄兵衛:若林哲行 
ひな/青い亀:白川和子 侏儒:マメ山田、プリティ太田

 東京の宝石商岩瀬の娘・早苗と常連客の緑川夫人が大阪のホテルの岩瀬の部屋で語らってる。というのも、実は岩瀬には「早苗を誘拐する」との黒蜥蜴からの脅迫状が来ており、そのため早苗を見合いを兼ねて、探偵・明智小五郎をつけて大阪に避難させているのだ。見合いの相手が気に入らなかった早苗に、緑川夫人は青年実業家の雨宮を紹介する。彼は緑川夫人こと黒蜥蜴の手下で、早苗を略取することに成功するが、明智小五郎に裏をかかれて早苗を奪還されてしまう。

 警備の厳しくなった東京の岩瀬邸だが、黒蜥蜴は家政婦として入り込んだひなを使い、長いすの中に早苗を入れて運び出してしまう。身代金として要求したダイヤ「エジプトの星」をも手に入れた黒蜥蜴は、船で自分の「恐怖美術館」のある島へと向かうが、その船には明智小五郎も乗り込んでいた……。

 97年に見たきりの「黒蜥蜴」だったけれど、見始めたら結構思い出したりするもので。

 美輪サマは少し(でもなく?)痩せたような気が。和服姿もともかく、黒のドレスのラインが以前よりもすっきりとして、それなりの説得力を持ってしまうからすごい。仕草とかたたずまいとか、「本当のライン」以上を作り出すものが身についてるんだろうなあ。台詞は、「噛む」というよりも、やや早口に流れる場所もあったけれど、「キメ」に入ったときの迫力はさすが。

 ショーゴくんがそれに拮抗する力のある芝居で、今この人に明智をやらせるのは、ちゃんと理由があるんだなあ、と思いましたよ。だけどちょっとワンコが入ってるところは相変わらずで、まあ逆にそこがツボだよね( ̄▽ ̄)、と。それはそれとして、やっぱり雨宮役を見そびれたのは残念だ。ちょうど芝居から足が遠のいていたころなんだよなあ。不覚。
 オールバックは今ひとつ似合わないというか、なんとなく高島兄弟みたくなってしまうんだな(←以前どちらかが明智をやっていたような)。ラインや身のこなしの美しさはやっぱり魅力。声もちょっと低めでいいんだよなー、と、この辺りはいつもの感想。年に1度しか見ないんだから、いつもと同じでもいいじゃないか。

 岩瀬役の若林さんが、いかにも成金っぽい品の悪さで好演。白川さんのビミョーな庶民っぽさがいいなあ。さんざん「ミシンとこうもり傘」的な修辞を披露したあとの黒蜥蜴に、「……サファイアがもんじゃ焼きになっても、……まあ、いいのよ」と言わせてしまう説得力というか。美輪組のお楽しみ、城月さんが、メイド1役なのは贅沢というかもったいないというか。

 マメさん、プリティさんとならぶと本当に小さい。荷物ごと運ばれていっちゃうのがカワユスよー。マメさん、プリティさんの間に美輪サマが入って手をつないだ時の、あの不思議な幸福感はなんだろうなあ。手をつながなくとも、3人でいることで満たされる「空気」というか。「毛皮のマリー」の時にも通ずる、不思議な「聖母子像」的な。それは「道化」である2人が、黒蜥蜴が唯一無防備になる存在であるということもあるんだろうけど、それは明智の「水葬」の後も同じで、こういうときの美輪サマって、ふっと慈母になっちゃったりするんだよなあ。

 乱歩芝居ではあるけれど、舞台に乗せてしまうとそれほどの「猟奇」ではなくなるので、やはり三島の「修辞」を楽しむのがメイン。
 見所(聞き所?)的には、1幕の黒蜥蜴の「理想の世界」、1幕と2幕の明智の犯罪論、3幕の、黒蜥蜴の、長いすの中の明智へのモノローグ、檻の中の雨宮と(偽)早苗、となるんだと思うんだけども。
 美輪サマは、前述の通り、ちょっと流れる場面があったけど、もうほとんど「日常言語」のレベルで「三島言語」をしゃべるというのは、やっぱり超ベテランならでは。ショーゴくんの、特に1幕の緑川夫人に向かって自説を延々披露する場面は、台詞回しや立ち居振る舞いもよかったけど、その若さというか。すでに評判の高い「名探偵」なんだけど、まだ駆け出しっぽさも残るところがいいんだよなー。ロマンチストでも許せちゃう、みたいな感じで。
 長いすの場面はねー。会場からはすすり泣きも起きてたんだけど、ほら、初見じゃない人には、本当は中身が明智じゃないのがわかっちゃってるじゃないですか( ̄▽ ̄)。もちろん、明智は明智で別の形でそれを盗み聞き(!)してるのでああいう結末になるんですが、やっぱりこう、「あたしの接吻がわかって?」っていうと「いやそれ……」ってこう気持ちツッコんじゃう、っていう。

 で、すごくよかったのが檻の中の雨宮です。雨宮は、黒蜥蜴が一瞬とはいえ惚れ込むような美青年のはずなんですが、中島歩は、写真で見たときも、2幕の黒蜥蜴のアジトでもちょっといまひとつかなー、と思ってたんですよ。確かに身長は高いし、スタイルもよいし、そこいらはショーゴくんにひけをとらないんだけど、ワンコ感が足らんしなー。と思ったら、ほんとうのここのモノローグは今回の白眉っつうくらいによかった。会場もすすり泣きだ。あの狂気ばしった色気は大嶋さん系ですかねぃ(勘平似合うぞ、きっと)。それに共鳴するように、あるいはここへきて本領発揮なのか、雨宮の狂気の世界にのめり込んでいく(偽)早苗役の義達さんがいいんですよ。2人であれだけ盛り上がっちゃったら、明智に救出された後の人生はなんとも味気ないだろうなあ……。まあ、そこまでの早苗というのは、ただの(愚かな)ブルジョアのお嬢さんだし、雨宮も黒蜥蜴をいらだたせる(愚かな)嫉妬深い青年であるので、前半の「今ひとつ」感というのも、それはそれで正しいありようかも。

 プログラムでは、「黒蜥蜴はこれで最後にしようかと思ったけど、90歳の黒蜥蜴も悪くないかと思ったり」との趣旨のことが書かれてましたが、とりあえず今回久しぶりに見られてよかったなー、と。

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