フォト

最近のトラックバック

Amazon Search

無料ブログはココログ

« 【バレエ】シルヴィ・ギエムファイナル キャスト表(2015.12) | トップページ | 【バレエ】白鳥の湖キャスト表(2016.2) »

【書籍】みるく世ややがて 沖縄・名護からの発信

浦島悦子著 インパクト出版会 2015.10

「今」へいたる道をたどる記録

 長く「インパクション」誌に連載された、名護在住の浦島悦子氏によるレポート。本書はその「インパクション」が休刊するまでと、その後他誌に掲載された文章を元にした、五年分の記録となる。本書に収録された二〇一〇年六月から二〇一五年八月という期間は、個人的には「派兵チェック」を終刊させた二〇一〇年二月に運動から離れて「四年間の休暇」に入っていた時期とも重なり、あらためてこの五年間になにが起き、何が行われたかを確認するのにたいへん役に立った。しかも自分のようにすぐに時系列がぐちゃぐちゃになってしまうタイプにとっては、時々こうやって「通史的」な確認をするのは必要かも。連載を読んでいるオンタイムで感じることとはまた別に、見えてくるものもあるし。

 さて、二〇一〇年六月、鳩山政権が「県外移設」の公約を撤回した直後の抗議集会から本書は始まり、その「県外移設」を公約に掲げた仲井間知事の誕生と公約破りによる終焉、翁長知事の誕生と新たな島ぐるみ闘争とが描かれる。

 

 この五年間。書かれていることに「あれ、そんなに前のことだったっけ?」あるいは逆に「そんなに最近だったっけ?」と思うこともしばしばだった。しかしこの五年間。仲井間氏から翁長氏への県政の移行、それを可能にした、あるいはその「翁長県政」の「強さ」を創り上げた、いわば助走期間であったと(「県政」という面で言うならば)思えてくる。

例えば二〇一二年の衆議院選挙。照屋氏以外は選挙区で自民党の勝利、玉城デニー氏がギリギリでの比例区当選(しかもまだ「日本未来の党」だったんだな……)。ここから4選挙区全区での勝利まで、まる二年のことだ。たった二年前(今からでは三年前)のこととは思えないと同時に、二年でこれだけ「動く」ものもあるのだとあらためて驚く。
 
 そして政府の打ってくる手はある意味十年一日のように同じであるように見える。同じことが果てなく繰り返される、うっかりするとそんな気持ちになる。

 長く名護に住み、二見以北住民の会の活動を続けている著者の立ち位置も大きいのだろうが、今回まとめて読んでみると、この辺野古新基地反対運動が、名護で暮らす人にとってはまさに「住民運動」であるという、ごく当たり前のことを実感する。「住民の会」で、また稲嶺市長を支える「いーなぐ会」での活動を記す著者の筆致は実にいきいきとしている。
 
 そして運動と稲嶺名護市長との関係。稲嶺市長が二見以北の出身、すなわちもろに「地元」であるということも大きいのだろうが、距離が近く、「自分たちの市長」という実感が伝わってくる。以前、まだ一期目の時に、東京で行われた市政報告会的な集会(名護の市職の方だったかが報告者)に出たことがあるのだが、基地交付金に頼らない財政を作るための奮闘ぶりなど、行政マンとしても優秀なことを聞いて、二期目の当選の時は、基地問題だけでなくそうした業績が評価されたことも大きかったのだろうと思ったものだ。その市長を育て、支え、また市長は揺るがない姿勢でそれに応え、市議会を含めてリードしていく。住民運動と行政の、ある意味では理想的な関係がそこにある。こういう人材というのは、出るべくして出るものなんだなあと妙に感慨にふけってしまうが、これも二十年の蓄積なのだろうと思うと、複雑な気持ちもないではない。

 基地問題、とりわけ沖縄における米軍基地の問題は、もちろん「住民運動」という枠だけでくくれるものではないけれども、住民運動とは縁がなく、これからもおそらく縁のない自分には、本書はそのひとつのモデルケースを、そしてそれが「市」から「県」へと広がっていく、その過程を見るような感もあった。それは、今まさに代執行訴訟を通して「地方自治」とは何か、をも問うものとなっているのだけれど、本書を通して読むことで、その道筋がよく見えてくる。つまりこれは、「何があったか」の記録であるとともに、「何故このようになったか」「何故今があるのか」を辿る道でもあるのだ。

 余談めくが、印象深かったのは前半部にある、雨の久志岳に登る場面。短い場面ではあるが、歩いたことのない久志岳、自分では見たことのない風景が眼前に広がる思いだった。
 (反天皇制運動「カーニバル」33号 2015.12掲載)

 

« 【バレエ】シルヴィ・ギエムファイナル キャスト表(2015.12) | トップページ | 【バレエ】白鳥の湖キャスト表(2016.2) »