邦画

【映画】夢のまにまに

夢のまにまに

木村威夫/原作・監督/2008年/日本/1時間46分

 木室(長門裕之)は、妻・エミ子(有馬稲子)の世話をしながら、映画制作の学校・NK学院で若者たちを教えている。足が不自由になったエミ子は、広告チラシでコラージュを創り、最後まで思い出せないピアノ曲を弾き続けている。老いた木室は何かにつけて、自分の過去を思い出すようになる。空襲の最中のエミ子との出会い、焼け跡の飲み屋とそのママ(宮沢りえ)、飲み屋の常連の文士たち。ある日、駅前の広場にある、幹にたくさんの瘤のある銀杏の大樹のそばで、木室はママによく似た銅版画家・中埜(宮沢りえ・二役)と出会う。一方、木室の生徒の一人、腕にマリリン・モンローの刺青をした村上(井上芳雄)は、統合失調症のため学院を中退して故郷の熊本で入院する。木室と村上との手紙のやりとりが始まる——。

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【映画】桃太郎 海の神兵


監督・脚本・演出/瀬尾光世 1945年作品 松竹 白黒 74分

叙情が戦意を昂揚する

 いいかげん、たまったビデオを整理しようとラベルのないテープを再生したら、いきなり荻昌弘が出た。びっくりした。土曜ロードショーの枠で「桃太郎 海の神兵」を放送したときのものだった。瀬尾光世と手塚治虫の座談会がついていた。すごいな。CMから推測すると八七年の放映。ううむ。ちなみに私は戦後五十年企画として映画館で観ている。

 さて、本編の方は、海軍省に委託され、後援を受けて制作されたアニメーション。冒頭に「メナド降下作戦に参加せる海軍落下傘部隊将士の談話による」とある。敗戦時に焼却されたと言われていたが、後にネガが発見され、八四年に再公開された。

 字幕が消えるといきなり富士山。のどかな山間の農村に、雉、犬、猿、熊の水兵たちが帰郷していく。あくまでも美しい田園風景。四人(匹?)はまず村の神社にそろって拝礼をすませ、それぞれの家に帰っていく。熊の家では年老いた両親が端午の節句の用意をし、犬の両親は畑仕事に精を出している。


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【映画】GAMA−−月桃の花

GAMA——月桃の花   
監督/大澤豊 1996年作品

 アオリ文句のひとつは「沖縄の”平和の礎”を映画化」だった。確かに「平和の礎」が大田=平和=県政の象徴だとするならば、その通りの映画であった。

 沖縄に一人の青年が降り立つ。沖縄生まれの母と米兵の父を持つジョージ(川口慈英)が、祖母・宮里房(玉木初枝)から自分のルーツを聞くためにアメリカからやってきたのだ。彼は偶然出会った糸数文子と二人、祖母を訪ねる。文子は「平和の礎」の刻銘のために聞き取り調査をしているのだが、房は自分の体験を語ろうとしなかった。

 物語は入れ子になっている。「平和の礎」をめぐる現在(一九九五年)の中に、房の語る沖縄戦の物語——パンフレットによると、以前より演劇としてあった「洞窟(ガマ)」——がすっぽりとはめこまれている。この二つの部分の違和感は、房役の玉木初枝(現在)から朝霧舞(過去)、もう一度玉木へ、という転換の際の演出的・技術的なものだけではない。現在を創る力のあやうさ、あやふやさである。

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【映画】ホタル

ホタル
監督/降旗康男 2001年作品

「感動した!ありがとおおっ!」が聞こえてくるよな、やっぱ

 桜島の見える海でカンパチの養殖を営む元特攻隊員の山岡(高倉健)と腎臓透析を続ける妻の知子(田中裕子)。「昭和天皇」が死んだ日、山岡の部下で今は八甲田に住む藤枝(井川比佐志)が突然、知覧の特攻平和会館から山岡の家に電話をかけてくるが、行き違いになる。そして「大喪の礼」の日、藤枝は八甲田山で自殺する。「特攻の母」と言われた富子(奈良岡朋子)は老人ホームへ入りたい、と言い出し、山岡に、山岡と藤枝の上官であった金山少尉(小澤征悦)の遺品を遺族に届けて欲しい、と頼む。金山少尉は本名キム・ソンジュという朝鮮人の特攻兵であり、知子の許嫁でもあった。しぶる山岡だが、知子の命があと一年余りと聞いて、二人で韓国へ行くことを決意する……。

 とまあ、こんな「現在」(と言ってももはや十年前だなぁ)を軸に、藤枝の孫、真美(水橋貴己)にオトナたちがそれぞれに語る回想が織り交ぜられながら、物語が進む。

 いやもう、泣き所満載! 半分も行かないうちからそこいらで鼻すすりまくってる音が聞こえてくる。藤枝が特攻平和会館で見る(という設定の)ショパンの「別れの曲」をバックにした特攻機の出撃−特攻−どんどこ撃ち落とされていく実写フィルムあたりから始まって、富子の語る「ホタルとなって帰ってきた特攻兵」だとか、「金山少尉の所へ連れてって!」と特攻機に突っ込む知子だとか、金山少尉が最後の晩に歌うアリランだとか、「不器用ですから」な健さんとか、好きなだけ泣いてくれえ! てなもんだ。

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【映画】男たちの大和/YAMATO  

男たちの大和/YAMATO  
監督/佐藤純彌 2005年作品 東映/角川春樹事務所

かくて消費されるツッコミなき「泣ける映画」

 二〇〇五年、四月。枕崎市の漁協に「大和の沈没地点まで船を出してくれ」という女性、内田(鈴木京香)が現れる。元大和乗組員で、現在は漁師の神尾(仲代達矢)は、彼女がかつて自分をかわいがってくれた上官・内田二曹(中村獅童)の娘と知り、一五歳のアルバイト漁師・アツシと共に船を出す。特別少年兵として一五歳で志願、後に大和乗組員となった神尾の語る、大和の物語が始まる……。

 この二年ほど、舞踊関係の文章をぽそぽそと書き、読みながら痛感したことがある。それは舞台であれ映画であれ、見るということは作り手・受け手の共同作業であって、受け手が自分の中に存在しない「物語」を見いだすのは、なかなかに困難だということだ。「新しい物語」を受け入れられないというのではない。ぼつん、ぼつんと置かれたちょっとしたとっかかりから、未知の物語を展開していくのは、受け手にその気がなければ難しい。あらかじめ持っている自らの参照項の中から選んでわかりやすい物語として読み解くのもまた、受け手の作業なのだ。

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【映画】プライド——運命の瞬間(とき)

プライド——運命の瞬間(とき)
監督/伊藤俊哉 1998年作品 

「大東亜戦争正当化」失敗作の悲喜劇

 裁判冒頭、法廷から引きづり出される大川周明が抵抗しながら叫ぶ。「It's a comedy!」

 まったく、出来の悪いコメディを見せられているようだった。散漫な構成、活かされない役柄、不十分な説明、そして津川雅彦のオーバーアクト。「東条がのり移った」といわれた津川の演技だったが、例えば法廷で松岡洋右の死を知らされる場面、あるいは「ただ一人特攻隊となって闘う」という有名な場面での過剰さは、悪い冗談みたいなものだ。パル判事の私生活部分も、せっかくインドロケまでして、かえって話を散漫にさせている。若い恋人たちも、背負わせたい役割は理解できるが、そのように活かされてはいない。観客が「これはこういうふうなことを描きたかったんだろうなあ」などと思いながら観るようではまずかろう。また、どこの国が参加していたのか、死刑囚以外の判決はどうだったのかという基本的な事柄、「天皇免責」をめぐる連合国相互の確執もほんのアリバイ程度で、東京裁判の本質・全体像を描くという点でも未消化に終わっている。


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【映画】THE 有頂天ホテル

THE有頂天ホテル

監督/三谷幸喜 2006年作品/東宝

 大晦日のホテル・アヴァンティ。宿泊部長・副支配人の新堂(役所広司)とアシスタント・マネージャーの矢部(戸田恵子)、飲料部長・副支配人瀬尾(生瀬勝久)は、年越しイベントやマン・オブ・ザ・イヤーの授賞式やら、宿泊客やらのトラブルやらでてんてこ舞い。ベルボーイをしながらストリート・ミュージシャンを続けてきた只野(香取慎吾)は、今日で退職して田舎に帰る予定が、相次ぐトラブルで「もう一日だけ」と懇願されて再び制服を着る。ウェイターの丹下(川平慈英)と恋人の客室係・野間(堀内敬子)はケンカの真っ最中。シングルマザーの客室係ハナ(松たか子)は、すさまじく散らかった部屋を片づけるうちに、その部屋の宿泊客である会社社長の愛人と間違えられて大芝居。ハナの昔の恋人、汚職国会議員の武藤田(佐藤浩市)は、マスコミから逃れて逗留中。今年のマン・オブ・ザ・イヤーの受章者の妻(原田美枝子)は新堂の別れた妻。ショーに出るはずのアヒルは逃げだし、総支配人(伊東四朗)は迷子になり、コールガールのヨーコ(篠原涼子)はうろうろする。新堂は無事に年を越せるのか?


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【映画】ジャズ大名

ジャズ大名

監督/岡本喜八 1986年作品/大映

非良心的兵役拒否でいこう!

 特別できがいいわけでもなくて、しかもB級っていうよりも高校生が文化祭で作った八ミリみたいなヤツで、だけども無性に愛しちゃうんだよな、という映画というのはやっぱり存在し、それはたいそう幸福な出会いなのだ。「a movie」時代の(というのは「漂流教室」以前の、という意味だ)大林宣彦にもいくつかそんな映画があるが、これもまた、岡本喜八のそのひとつ。

 映画は唐突に、リンカーンへの手紙から始まる。南北戦争後のアメリカ。奴隷から解放されたものの、食うにもことかく黒人ジョー。船に乗り先祖の土地アフリカへ帰るべく、トロンボーン、クラリネット、コルネットに太鼓のカルテットで金を稼ぎながらニューオリンズへ向かう。しかし、やっと乗り込んだ船の中でクラリネットのボブが病死。船も大嵐に巻き込まれて三人はボートで脱出する。そして着いたところは駿河湾の小藩。

 時あたかも幕末。小藩とはいえ交通の要所にあるこの城は、上は山越えの難所、下は海岸の難所、城内(「城下」じゃないのがミソ)を通るのがいちばん早いと薩長から旗本まで、あらゆる人々が通り抜ける。堅物の家老(財津一郎)からはお家安泰を、若い武士からは左右のいずれにつくのかを突き上げられ、藩主海郷(古谷一行)はいいかげんウンザリ。そこへ漂着したのがくだんの三人。会ってみたくてたまらない藩主は、城の地下の座敷牢に彼らを運び込む。地下から彼らの音楽が聞こえてくると、自らもひちりき(雅楽の笛)を「たしなむ」藩主はもうしんぼうならない。ボブのクラリネットを譲り受け、朝も晩も吹き鳴らす。嘆く家老をよそに、城内にはにわかジャズブームがまきおこるが、江戸表からは薩摩屋敷焼き討ちの知らせ。東からは薩摩浪士の残党とそれを追う小田原藩兵、西からは薩長軍。覚悟を決めた藩主は命ずる。「畳を返し、建具をはずし、調度品を片づける!」かくて、地上を通り抜ける戦乱をよそに、城内すべてのものがもぐった地下の座敷牢で、いつ果てるともないセッションが続くのだ……。

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【映画】海猿

海猿 

羽住英一郎監督/東宝/2004年作品

「人命救助」はうちが本家です。

 主人公たちが罰則で「腕立て百回」を何度もやるシーンを観ながら思い出した。大手印刷会社に就職した友人が、新人研修で「自衛隊体験入隊」に参加したときの話。やっぱり年中遅刻していた同僚が腕立て伏せを命じられ、最後の方はみんな泣きながら応援して奇妙な一体感が生まれていたとのエピソードである。友人は「自分もその時は涙が出たりしちゃうんだけど、今考えるとすごく気持ち悪いんだよね」と言っていたけど、まあこれもそういう映画。

 呉、海上保安大学校。潜水士となる訓練を受けるべく、十四名の海上保安官が集まった。ダイブマスターの資格を持つ仙崎(伊藤英明)は純朴な劣等生の工藤(伊藤淳史)とバディを組む。想像を超えた厳しい訓練、羽目をはずす休日。主任教官の源(藤竜也)はことあるごとに問う。「水深四十メートル。バディと二人、取り残された。使えるボンベはひとつだけ。残圧三十、片道一人分。さあ、お前たちなら、どうする」。

 プールでの最終テストを特訓と励ましで乗り切った工藤が、仲間とダイビングで過ごした後、憧れの看護士エリカ(香里奈)と海岸で過ごしていると、沖から助けを呼ぶ声が聞こえてきた。迷わず海に飛び込む工藤。しかし、工藤はそのまま帰らぬ人になった。源は、事故現場の死体引き上げ作業のフィルムを見せながら言う。「要救助者も助けられなかった。犬死にだ。一般人なら美談だが、我々にとっては恥ずべきことだ」。いつもの問いかけに、やはりダイブマスターの資格を持つエリート三島(海東健)はきっぱり答える。「体力のある方がボンベを使って浮上します」。

 工藤の死のショックから立ち直れない仙崎だったが、食堂のおばちゃん(杏子)から源の過去——「水深四十メートル」の真相を聞き、「決してバディを見捨てない」と源に宣言、訓練に戻った。そして最終テスト。水深四〇メートルにフランジを組む。最終組として、三島とバディを組み潜る仙崎。フランジ設営を終わって浮上しようとした矢先、急激に潮流が変わり、二人は命綱から引き離され流される。水深四五メートル、ボンベを損傷した三島は岩に脚をはさまれ動けない。船上の源は救助要請を出すが、仙崎のボンベ一つでは間に合わない……。

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【映画】ハウルの動く城 

ハウルの動く城 

監督/宮崎駿 2004年作品 スタジオジブリ

 結局見損なったなぁと思ったら、まだ上映していた。宮崎アニメはもしかしたら、岩波映画より上映期間が長いのか? 

 科学と魔法が同居する、架空のヨーロッパ。帽子屋の娘ソフィー(倍賞千恵子)は、軍事パレードに沸く街で兵隊にからまれた所を魔法使いハウル(木村拓哉)に助けられるが、逆にハウルを狙う荒れ地の魔女(美輪明宏)に呪いをかけられて老婆にされてしまう。帽子屋にいられなくなったソフィーは、途中で助けたカカシのカブにハウルの城に案内され、そのまま掃除婦として居着く。ハウルとの契約で城を動かす火の悪魔カルシファー(我修院達也)、ハウルの弟子の少年マルクル(神木隆之介)らと過ごす日々もつかの間、ハウルには戦争に協力するよう、国王から召喚状が来る。王室付き魔法使いサリマン(加藤治子)の手を逃れてやって来たソフィーの街でも、空襲は激しさを増す。城を守ろうとするハウルは魔法に捉えられ、人間の姿を失いかけていた…。

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【映画】千と千尋の神隠し  

千と千尋の神隠し
監督/宮崎駿 2001年作品

たまには何も考えないでお風呂に入ろう

 年明け最初に観る一本だし、去年は本当にいいことがないって印象だし、年末ぎりぎりまで残業でくたびれちゃったし、このところウツ入ってるし、難しいもんは観たくないよお、「癒され」たいわけじゃないけど疲れたくないよお、てなわけで、今更ながらこういうものを観てみました。

 去年の七月から延々と上映し続けている『千と千尋』も、今号が発売される頃にはようやく終了するらしい。長かったなあ。『キプールの記憶』なんか今日観に行ったら「昨日で終了しました」なんて言われちゃったよ(六週で打ち切り)。それでも正月休み中とはいえ、池袋の映画館はいっぱい。二館上映で、六時半からの回でも親子連れが多かった。

 千尋は十歳の女の子。親の都合でいやいやながら引っ越しの町に着いたところ……が、父親が道を間違えて山の中腹の「変な門」に着いてしまう。嫌がる千尋を後目にどんどん「探検」してしまう父と母。ついでに屋台に山盛りになっている中華風ゴチソウを食べ始めた両親に耐えきれなくなった千尋が先へ進むと河の向こうにどでかい悪趣味な建物が。橋のたもとでは美少年が千尋を「早く戻れ」と追い返す。急に夜の闇がくるわ、バケモンはわらわら出るわ、両親は豚になってるわ、道は河に阻まれて進めないわ、もうめちゃくちゃ。美少年ハクの言うとおり、悪趣味な湯屋で働くしかなくなった千尋は、雇用者の湯婆婆に「千」と名付けられる。

 この湯屋は「八百万の神」が疲れを落としにくるところ。「景気のいい客が来ている」というのでカラになった従業員の部屋から千尋は、ハクが化身した龍が紙の式神に襲われているのを見る。湯婆婆の部屋で瀕死のハクに駆け寄った千尋に、湯婆婆の姉・銭婆と名乗る映像が、ハクが銭婆の印鑑を盗んだと言い、湯婆婆の赤ん坊「坊」をネズミに、手下をハエドリや偽「坊」に変える。一方「景気のいい客」は実は千尋が以前親切にしたカオナシという化物で、湯屋は大騒ぎになっていた。千尋は飽食したカオナシに腹の中身を吐かせると、「行きっぱなしの電車」に乗って、銭婆の家に向かった……。


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【映画】デビルマン

デビルマン
那須博之監督/2004年度作品/東映

 「こんなものなんて報道すればいいのよーっ!」「そこはほれ、マイア○メさん、適当に」(ゆうきまさみ「イデオンマイナーノート」『ぱろでぃわぁるど』みのり書房所収)。映画が終わって最初に思い出したのがこれ。試写会で暴れる記者となだめるスタッフの図。

 不動明(伊崎央登)はいじめられがちな、どちらかというとひ弱な高校生。親友飛鳥了(伊崎右典)は何をやらせても一流だが、ちょっと不気味でキレ安いイケメン。ある日、了の父たちの研究グループが誤って、眠っていた異種生命体「デーモン」を覚醒させてしまう。人間に合体して勢力を増やしていくデーモンたちは了と明にもとりつくが、精神を乗っ取られることなく逆にデーモンを取り込み「デビルマン」となった明は、デーモンから人間を守る決意をする。

 しかし、恐怖と猜疑心から人間たちは魔女狩りそのものの「悪魔狩り」を開始。それはやがて世界戦争に発展する。人間をすべて滅ぼそうとする了、悪魔狩りの標的となる明の恋人・牧村美樹(酒井彩名)の一家、デーモンとなった両親から逃れたススム少年を連れて逃避行を続けるミーコ(渋谷飛鳥)……。

 トラウママンガのバイブル、永井豪「デビルマン」の実写映画化である。原作ファンは怒り、読んでない人は話に取り残される、という出来。原作の「地球丸ごと巻き込んだ三角関係」というところはかろうじて出ていたけれど、主役の伊崎兄弟のセリフ回しが下手なのに脚本が拍車をかけていて笑うしかない。まあアイドル起用映画ではありがちではあるが……。

 人間同士の争いが平板になったのは「残酷描写」を避けるためなのだろうか。だがそのために「人間こそが悪魔だ」という、人間の醜さ、愚かさを徹底して暴いた原作の絶望感はついに出なかった。だから「人間は守る価値があるのか」という了の問いかけも宙に浮いてしまった。せめて「予防的治安」が優先される社会ってこんなんでっせ、って怖さが感じられれば、今映画化する意味もあったんだが。自警団ってコワイんでっせ、断ったらリンチでっせ! デーモン=テロリストと置き換えれば、まさしく、その世界への道を進んでいるのだから。

 「人間がほかの生物を食うように、俺も人間を食っただけだ」というジンメンとの対決は、作りようによっては「デビルマン」自身のテーマに迫れるエピソードなのにさらっと過ぎてしまったし。鳴り物入りだったシレーヌ(富永愛)との対決は「え、それだけ?」で終わってしまったし。了は最初っから正体ばらしちゃっていいんですかあ、とか、すべてサタンの計画通りのはずじゃなかったんですかあ、とかツッコミどころは満載(ギャグ映画じゃないってば)。有名人細切れ出演もどうかと思うが、KONISHIKI素のままでデーモン、はあまりにも哀れ。

 いくつか面白いカットもあるし、ミーコとススムの使い方はなるほどと思うんだが、サタンのパワーアップ後の造形もいいんだが、ラストの海辺のシーンもキレイなんだが、最後の最後、了と明の会話で全部台無し。結局何のための映画化だったんだろう。

(「インパクション」144号 04.12)

公式サイト
追記は「続きを読む」に(結構長文 ^^;)。

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【映画】戦国自衛隊1549

戦国自衛隊1549
手塚昌明監督/2005年/角川・東宝

自衛隊VSテロリスト、天母城の決戦

 どうしても前作(「戦国自衛隊」1979年制作)のイメージが尾を引いてしまうけれど、「似て非なる」映画。

 かつての陸自特殊攻撃部隊・Fユニットのナンバー2、今は除隊して居酒屋店長の鹿島(江口洋介)の元へ、森三佐(生瀬勝久)、神崎二尉(鈴木京香)が現れ、二年前、訓練中の事故で殉職したかつての上官・的場一佐(鹿賀丈史)が生きているという。しかも戦国時代で。近々、もう一度タイムスリップする条件が整うので、的場の救出オペレーション・ロメオ隊に、オブザーバーとして参加を要請に来たのだ。一度は断る鹿島だが、的場たちと入れ替わりに戦国時代から来たという武士・七兵衛(北村一輝)と出会い、ロメオ隊に加わる。

 タイムスリップしたロメオ隊を待っていたのは、織田信長を名乗る的場の攻撃だった。的場は斎藤道三(伊武雅刀)と手を組み、製油工場を備えた天母城を建設、MHD電池を使って富士山を噴火させ、関東一帯を壊滅させた後、「強い日本」を作ろうとしていた。藤介少年(中尾明慶)や七兵衛の助けで天母城から脱出したロメオ隊だが、森をはじめ部隊の半分以上を失い、負傷した神崎は捕虜になった。残存部隊の三國陸曹長(嶋大輔)は任務遂行を決断するが、勝ち目はあるのか…。


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